富士山と株価

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2007年11月16日

  • 吉野 貴晶
一生に一度は体験したいことは?など大それたことを聞かれると、一瞬、何て答えてよいのか困ったりする。ただ1つ頭に思い浮かぶことに「富士山に登ってみたい」がある。富士山は日本の象徴だし、日本人なら一度は制覇したいと思う。ただ意外に体験した人は少ない。我々の大和総研クオンツチームも富士登山経験者は筆者を含め1人もいない。

世の中には、富士山に「登らない…、2度登る…」という言葉もある。富士山の頂上からの展望は絶景と言われる。だから1度はそれを見るべきだ。ただ登山は厳しく疲労や寒さに加え高山病になることもある。それ程の辛い経験をしてまで2度登ろうとするのはどうか?辛かったことを忘れてしまう人なのか?ということだろう。そんな厳しい話を聞くと、実行に移すまでに至らない。体力や気力が充実した時期になってから挑戦しようと弱気になる。

ところが最近、筆者の周りに富士登山を達成したと得意に語る人が増えてきた。筆者はそうした体験話をうらやましく聞いているが、ふと、こうした人達に共通する点を考えた。『エネルギッジュで充実感があり、前向き』ということだ。一言で、ポジティブな人と言える。やはり体力や気力があるからこそ、富士登山にチャレンジできるのだろう。そして、その達成感で更に前向きな思考につながる。心理のプラスサイクルだ。

筆者は兼ねてより、株式投資とはつながりが見え難い事象と株価の関係を研究してきた。以前から研究している「サザエさんの視聴率と株価の関係」が代表だ。身近な情報と株価の関係は意外に強い。これを行動ファイナンス学と言う。そして富士山の登山者数と株価に強い関係があることを見つけた。

富士登山者数データは山梨県警地域課調べの統計を使った。富士山の登山者数は環境省の統計もある。しかし今回は山梨県内の富士登山者数に限った。比較のため同じ山梨県の御坂山塊(みさかさんかい)の登山者数も取り上げたからだ。近年の登山ブームもあり単純に富士登山数だけを見ると富士山を選好する登山者数のカウントを誤解する恐れがある。そこで地域が近い御坂山塊の登山者数と比較して富士山を選好する登山者数を捉えることにした。御坂山塊は、富士山と甲府盆地を隔てており、最高でも1800m程度の山々だ。山の標高もそれ程でなく富士山を望む景色で知られ手軽に臨める。また登山コースの終着点には温泉も多く、癒しがある場所だ。誤解を恐れずにいうと、富士登山者が増えると体力や気力が充実している人々や投資家が多く、御坂山塊の登山者数が増えると逆に癒しが必要な投資家が増えていると考えた。

実際に株価との関係を見た。富士登山者数が御坂山塊と比べて増えた場合にはその年の日経平均は約7割の確率で上昇した。反対に御坂山塊の登山者数が増えた場合には、55.6%の確率で日経平均は下落した。事前の仮説通りの結果だ。富士登山者数が増えると株価が上がるということだ。

さて、今年はどうか?富士山の登山者が増えたのは筆者の周りだけか?期待したいところだ。

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