内部統制と仏像

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2007年04月26日

  • 五井 孝

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準ならびに実施基準」(以下、実施基準)が公表されたことを受けて、企業等での対応が本格的になってきている。内部統制関連の書籍も次々と出版されており、専用のコーナーを設けている書店もある。

実施基準では、内部統制を構築するプロセスとして、次の3つが挙げられている。
(1)基本的計画及び方針の決定
(2)内部統制の整備状況の把握
(3)把握された不備への対応及び是正

特に(2)においては、内部統制の整備状況を把握するために、「業務フロー」、「業務記述書」、「リスク・コントロール・マトリックス」(RCM)を作成しなければならないとよく言われている。いわゆる文書化の3点セットであり、実施基準にも具体的な例が記載されている。実施基準においては、この3点セットを作成しなければならないとは言っておらず、あくまで内部統制の整備状況を把握し、記録・保存する際の参考として挙げている。目的は、業務プロセス上のどこにリスクがあり、そのリスクを低減するためにどのようなコントロールが組み込まれているか、不備な点は何かなどを確認するために可視化することであることに留意すべきである。

一方、内部統制の有効性評価のプロセスでは、内部統制の整備状況と運用状況の両面から評価する必要があるが、重要なのは運用状況の有効性である。どんなに立派な規程や手続きを整備し、業務フローや業務マニュアル、RCMを作成しても、それが日常業務の中で適切に機能しなければ、“仏像作って、魂入れず”となってしまう。これでは、まったく御利益もなく、無駄なコストをかけただけに終わってしまう。

文書化の3点セットを作成して、不備への対応ができたということで終わりにならないよう、また、一時的なブームにならないようにすることが重要である。

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