詳細待たれる、「利益連動給与」の損金算入

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2006年03月08日

2006 年度税制改正で、役員給与の損金算入の範囲が拡大される。これまでは、いわゆる“定時定額要件”により、原則として、一月以下の期間で規則的に定 額を支給する給与が損金算入を認められてきた。そのため、役員賞与は損金不算入とされてきたが、この制限が緩和される。現在国会に提出されている「所得税 法等の一部を改正する等の法律案」では、定時定額要件に合致しないものでも、次の2つについては損金算入を認めることとしている。

(1)所定の時期に確定額を支給する給与
(2)利益連動給与

中でも注目すべきは(2)であろう。近年、業績や株主価値等との連動性を重視して、業績連動報酬を導入する企業が増加しているが、商法で業績連動報酬が容 認された後も、税法では業績連動報酬は損金不算入とされてきた。こうした経緯を考えると、今回、税法にインセンティブ報酬の理念が採り入れられたことは意 義深い改正といえる。

もっとも、利益連動報酬を損金算入するためには、数々の条件が課されている。主な条件だけでも、以下のような点をクリアする必要がある。

給与を支給する法人が同族会社に該当しないこと
確定額を限度としていること
一定の日までに、報酬委員会の決定その他これに準ずる適正な手続きを 経ていること
算定方法の内容が、有価証券報告書への記載その他一定の方法により開 示されていること

要するに、業績に応じて支給額が変動する給与については、課税の公平性の観点からも、その算定方法について高い透明性・客観性を求めているわけである。業 績連動報酬を導入している企業又は今後導入を検討している企業は、こうした税法上の条件も今後注視していく必要がある。

しかし、利益連動給与の損金算入要件は、現在法律案が明らかになっているだけで、不明確な点が少なくない。例えば、次のような点は政省令に委任されてい る。

利益連動給与の算定方法は、いつまでに報酬委員会の決定等を行う必要 があるのか?
報酬委員会の決定に準ずる適正な手続には、何が含まれるのか?
有価証券報告書での開示以外に認められる開示方法とは何か?

また、新たに損金算入が可能となるのは、あくまでも「利益」連動給与であり、業績連動報酬ではない。有価証券報告書に記載される「利益に関する指標」に連 動することを前提としている。有価証券報告書に記載される「利益に関する指標」といえば、営業利益、経常利益などは当然該当するであろうが、1株あたり当 期純利益やROE(自己資本利益率)などを指標とすることも認められるのか。詳細な取扱いの公表が待たれる。

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