公開買付け終了後のライブドア問題の現状

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2005年03月10日

  • 吉川 満

フジテレビのTOBが成功裏に終了、フジテレビがニッポン放送の株式の36.47%を支配した。これにより、抗争の次の最大の焦点は今週中に予想される新株予約権発行差し止めの仮処分を求める訴訟の第一審の結果となった。

また新株予約権発行の期日は3月24日である。それまでに第一審で負けた側がこの件を第二審に訴えて出ると思われ、かつ第二審の判決も24日前に出ると思われるので、最終的には第二審の決定が最も重要ということになる。日程的に見て第三審(最高裁)の判断を問うのはかなり苦しいと思われる。

24日の段階で、直近の司法判断に従ってニッポン放送は新株予約権を発行するかどうかを決定することになる。ひとたび発行されればそれが既成事実化される可能性が強く、事後的に損害賠償の可能性はあるとしても、ニッポン放送の支配をめぐる問題は24日段階の直近の司法判断(おそらく第二審)に左右される可能性が強い。

3月7日に発表された企業価値研究会(事務局は経済産業省)の中間発表の影響から、世論はいくらか方向ができつつあるように思われる。また米国の「ユノキャル基準(買い集めた株を高値で引き取らせるグリーンメイラーとして有名なピケンズ氏のメサ石油社が、二段階買収とよばれる高圧的なM&Aを仕掛けたのに対し、ユノキャル社がメサ石油社を除いた株式のみを対象として行った公開買付けを違法ではない、と裁判所が判断した例)」が紹介されたため、「ぎりぎりの手段」で仕掛けられたら「ぎりぎりの手段で応えてよい」という考え方が高まっていると思う。

しかし具体的にライブドア問題について裁判所がどう判断するかは未知数なので、第一審の反応、及びそれに対する世論の反応に注目していく必要がある。

ニッポン放送は最大4720万株の株式に相当する新株予約権を発行する計画であるが、フジテレビの村上社長は9日、「(ニッポン放送を完全に子会社化できる過半数を確保するには)あと27%(880万株)ぐらいの増資が必要と思っている」と発言している。

これに対し、ライブドアの堀江社長は「(ニッポン放送の)取締役会を支配して増資すれば、ニッポン放送が持つフジテレビ株の議決権が復活し、フジテレビへの影響力を行使できる」と述べている。つまり、フジテレビ、ライブドアの双方とも資金調達の必要性よりも、買収ないし買収防衛の手段として新株ないし新株予約権を発行しようとしている。

こういう場合、従来の主要目的テストでは、主要目的が資金ニーズを満たすことでない新株発行、新株予約権発行は経営者の保身のための発行とみなされる傾向にあった。主要目的テストは現実にあわなくなってきているといえる。「企業価値研究会」の提案するように、主要目的テストを見直して、買収策の正当性は企業にもたらされる脅威と、防衛策がそれを防ぐために相当なものといえるかどうかによって判断するようにしたほうがよいと思う。

ライブドアの今後予想される戦略は次のようなものである。

仮に(1)~(3)が実現したとしても、(3)までにはかなりの時間が必要で、長期戦は避けられない。条件のよくない資金調達を行ったライブドアにとっては重荷となる。(1)ニッポン放送株の過半数取得を目指し、株式の取得を続ける。(2)株主総会(最も近くて本年6月末)において、取締役の入れ替えをはかる。取締役の解任には特別決議(定足数50%超、議決権2/3以上)が必要なので、6月の定時総会前は取締役の入れ替えは無理。(3)過半数の取締役を制したら、増資(例えばライブドアに対する第三者割当増資、当然、差し止め訴訟に持ち込まれる可能性はある)を行い、フジテレビの保有比率を25%未満に落とし、ニッポン放送のフジテレビに対する議決権を復活させる。

なお昨日の毎日新聞は、「ライブドアが、ニッポン放送株の過半数を取得して経営権を得た場合」、「フジテレビジョン株について、25%超まで買い増しを検討している」と報じている(現在のライブドア保有フジテレビ株は22.5%<筆者注>)。ニッポン放送に対するフジテレビの議決権を停止する目的だと思われる。

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