アンパンマンと株価

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2008年03月11日

  • 吉野 貴晶
『アンパンマンは株価と強い関係がある』と聞くと驚くかもしれない。アンパンマンは、金曜夕方の4時半から日本テレビ系列で放送される「それいけ!アンパンマン」でお馴染みのキャラクターだ。顔がアンパンでできている。

毎年4月に(株)バンダイは「お子様の好きなキャラクターは何ですか?」のアンケートを取っている。その結果は誰でもホームページで見ることができる。1999年からの男子のアンパンマン人気度とTOPIX(東証株価指数)を比べると、綺麗に連動する。

やや難しい話になるがデータを統計的に処理して相関係数を算出すると0.61となった。相関係数は1から-1までの間を動く値だ。1に近いと完全に連動する。アンパンマン人気とTOPIXの相関は0.61だが統計の専門書によると0.6を越えると「かなり相関がある」となる。『アンパンマン人気が上がると、株価も上がる』関係が強いのだ。

相関係数では分かり難い読者もいるだろう。そこでアンパンマンの人気が上がった年(年度)に株がどの位の確率で上がるか?も見た。すると人気が上がった年は75%の確率(4回に3回の割合)でTOPIXも連動して上がった。反対にアンパンマン人気が下がると67%の確率(3回に2回の割合)で、TOPIXも下がった。

何故アンパンマン人気が上がると株価は上がるのか?アンパンマンの特徴を日本テレビの、それいけ!アンパンマンのホームページで見ると「優しくて強い」、そして「お腹の空いた人、困った人を助ける」となっている。一般に正義のシンボルとなるキャラクターは「悪を滅ぼす」印象が強い。しかしアンパンマンは優しいキャラクターが強い。それが人々の心理の余裕と関係しているのだろう。アンパンマンの人気が高い時には投資家を含めた人々の心理に余裕が高まる時と考える。これが株高と関連するのだろう。

そして、アンパンマンと対決するのは『ばいきんまん』と、補佐役の『ドキンちゃん』だ。ばいきんまん達も「悪」の象徴というよりも、いたずら好きのキャラクターだ。アンパンマンは、悪を倒す正義の痛快さを表現するのでなく、いたずらをこらしめるイメージが強い。これも社会の余裕を表しているのだろう。

そしてアンパンマン人気は株価だけでなく、その背後にある景気にも連動する。実質GDPと比べると相関係数は0.76となり株価よりも高い値だった。

ところで足元のアンパンマン人気はどうか? 2007年(昨年)4月の調査でアンパンマン人気は前年より下がり20.7%だった。これが2007年度の株安を示唆していたのかもしれない。アンパンマン人気が下がった大きな要因の1つはライバルの「ポケットモンスター」人気が高まったからだろう。2007年はポケットモンスターが最初に映画化されて10周年だったことが人気の背景にあるようだ。

では2008年はどうか?2008年はアンパンマンの映画化20周年だ。2007年にやや下がったアンパンマン人気の上昇と、それに連動した株価を期待したい。

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