英語による初等教育

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2007年12月05日

  • 山中 真樹
新聞報道等によれば、小学校における算数において、現行の学習指導要領では取扱わないとされている台形の面積の求め方を次の新学習指導要領において復活させるとのことである。所謂「ゆとり教育」のもと台形の面積の求め方は現行の学習指導要領においては削除されているそうであるが、ここにきて「ゆとり教育」がもたらしかねない生徒の学力低下への懸念が社会的に広がっており、当該改訂もこうした動きを踏まえてのことのようである。また、「ゆとり教育」に関しては一部論者によって「いまの小学校では円周率を3と教えている」との主張もなされ、それに対する反論がなされたことも記憶に新しいところである(当該論争の経緯、事実関係については本稿の趣旨と無関係なので割愛させて頂く)。

ところで、小学校における学習指導要領の内容がここまで問題になるということは、「台形」なり、「円周率」なりが一般教育を受けた日本人の知識として最低限必要と国民の大多数が認識しているからであろう。では、この「台形」や「円周率」を英語では何というのか、と問われたとき、即答できる日本人は実はかなり少ないのではなかろうか。日本人の知識として最低限必要であれば、英語を話す人々にとっての知識としても最低限必要ということは容易に推察される。ところが、日本人の英語の意外な盲点となっているのが、初等教育で習う事柄、特に理科系の事柄を英語で表現する能力に乏しいということである。

こうした欠点を克服するためには、根本的には初等教育の内容を英語で教育しなければならない。ここもと小学校における「英語活動」の導入が国民的な議論になっているが、真の国際人育成のためには英語教育の開始時期もさることながら、何を英語で教えるかが重要となろう。英語のネイティブスピーカーが最低限のものとして理解している知識は中高等教育で身につけさせるべきである。そのためには、是非とも、現在初等教育において日本語で教えている学問(特に算数・理科)の内容を、中高等教育において英語で教えるべきである。実現に向けた関係者のご努力を願う次第である。

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