情報開示なきまま、大学破綻が激増する

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2007年03月15日

ここ6年ほど30%前後だった「定員割れ大学」の比率が、平成18年度にはとうとう40%となってしまった。具体的な数字で言うと、全国550大学のうち222大学が、入学定員を満たせない状況である。しかも、この数字は一時的なものではない。今年の4月に入学者を迎える平成19年度は、この比率が50%前後になるのは必至であり、平成20年度以降も少子化の影響が続くため、悪化し続けるのは確実である。つまり、日本の大学の過半数、2校に1校は、定員割れとなるのである。

では、これから受験する学生は、自分が進学する大学が定員割れになっているかどうかを事前に確認することができるのであろうか。経営状態のよろしくない大学に関して言えば、ほとんどの場合、答えはNOである。というのも、全体で何校が定員割れになっているかというデータは開示されていても、個々の大学は、必ずしも入学者数を開示してはいないのが実態だ。そればかりか、財務諸表すら、広く公に開示する義務がない(努力目標となっているのみで強制されていない)ので、実質的に入手困難なことが(特に経営困難校の場合は)多い。

大学は、国から公的な補助金を受けている。また、税制面でも優遇されている。そういう意味からも、当然、財政状況や入学者数などのデータについて、大学側に説明責任があって然るべきであろうし、その情報は監督官庁である文部科学省のみならず、学生も含めた広く国民に公開されるべきものであろう。

確かに開示すれば、その悪い情報が公になることで、一層受験者が減るということは考えられる。しかし、だからといってそれらの情報を意図的に秘匿したまま学生を募集することができるような制度は、果たして本当に望ましいだろうか。例えば、銀行が、不良債権問題やペイオフ問題で、風評被害を懸念して、自己資本比率や不良債権比率などの財務データを公表しないということが許されるだろうか。

このような問題は、供給者サイドではなく、利用者サイドの視点に立って考えるべきことがらである。いつまでも先送りするわけにもいかない。というより、大学の経営状況は全体として今後ますます悪化することがわかっているだけに、情報開示を義務化する期限を出来るだけ早く明確にするべきであろう。当然、大学が破綻した場合の学生保護の観点からのセーフティネットの整備は必要である。しかし、本来はそのような議論はとっくに終わっているべきことである。遅れれば遅れるほど、最悪のタイミングで悪い情報が公開されることになる。

0~18歳の人口動態がすでに確定している以上、大学の整理・淘汰は、どちらに転んでも避けられない。550大学のうち、少なくとも一割は何らかの深刻な経営問題に今後直面すると思われる。経済界が経験した「失われた10年」の二の舞を回避するためにも、問題を先送りせず、勇気をもって、大学の危機に立ち向かっていくべきだろう。

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