トルコ総選挙の注目点

2015年3月9日

トルコでは、昨年から続く政治の季節がいよいよ本番を迎えている。2014年3月に地方選挙が行われた後、8月には初めて国民の直接投票による大統領選挙が実施され、当時首相だったエルドアン氏が当選し大統領に就任した。そして、今年は6月7日に総選挙の実施が予定されており、今月からは党内予備選挙による候補者の選出など、選挙関連手続きが開始される。

現地の支持率調査などの報道によると、与党である公正発展党(AKP)が現時点で40%を超える支持を集めており、地方選挙に続き今回の総選挙でも勝利を収めることが予想されているが、選挙の注目点はその獲得議席数となっている。

というのも、エルドアン大統領は、かねて現在は政治的に中立かつ儀礼的存在にとどまっている大統領権限の強化について意欲を見せており、そのために必要な憲法改正を目指しているとされているからだ。トルコでは、国会議員定数(550議席)の三分の二以上の賛成で国民投票を経ずに憲法を改正することができるため、AKPはこの議席数を獲得することを目指しているとされるが、最低限でも改正案を国民投票に付すことができる議席数(330議席)の確保が必要と言えよう。

大統領権限を強化する憲法改正案については、エルドアン大統領が首相3期目だった時代に他の改正案と合わせて議論がなされたが、一部与党からの反対などもあり達成されなかったという経緯がある。選挙後の憲法改正論議の行方により、エルドアン大統領が現在の立場のままの大統領としてとどまるか、より実務的な大統領となるかが決まるものとみられる。

2002年の政権担当以来、大規模な公共事業の実施による雇用の創出により高い経済成長を達成し、国民からの高い支持率を維持してきたAKPであるが、その支持率の裏付けとなっていた経済にはこのところ陰りが見える。トルコは慢性的な高インフレと莫大な経常収支赤字を抱えている他、昨年からは消費の鈍化に加え、失業率の上昇など雇用問題も深刻化している。政府は選挙を前に、景気拡大を目的に、中銀に対して強烈な利下げ圧力をかけているが、中銀の独立性に対する疑問につながっており、通貨リラが対米ドルで最安値を更新している。

政治面でも、近年では、メディア関係者に対する強制捜査の実施や、TwitterやYouTubeなど一部サイトへのアクセスが一時遮断されるなど、メディアに対する規制の強化を始めとして、反政府派の排除など政治の権威主義化が進んでいるとされている。この他、内政ではクルドとの和平プロセスの実施に加え、近隣のシリア・イラク情勢への対応など外交面でも多くの課題を抱えている。さらに選挙の結果、仮にAKPが目標議席を獲得できなかった場合には、エルドアン大統領の求心力の低下やそれに伴う政治の不安定化などが懸念されており、海外からの投資減少を招く恐れもある。建国100周年となる2023年までに世界で10位の経済規模となることを目指しているトルコであるが、その目標に向けた今後4年間が、政治的、経済的にどのような方向へ向かうのかが注目される。

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