日米の労働事情

失業率が下がればハッピーか

2014年7月9日

日本の労働市場は、大卒等の新卒採用だけでなく、より一般的な雇用指標である有効求人倍率(新規学卒者を除きパートタイムを含む、季節調整値)でみても、直近5月は1.09倍と90年代初めのバブル期以来の好環境である。また、失業率は2010年以降、低下トレンドをたどっており、5月は3.5%と1997年末に並ぶ低さまで改善している。ただ、統計の定義上、労働市場から人々が退出すれば(「労働参加率=(就業者+失業者)/15歳以上人口」が低下すると)、仮に無職であっても失業者にカウントされることはなく、それだけ失業率は低く抑えられる。

2000年代に入って女性の労働参加率はおおむね横ばい圏で推移しているのに対して、男性の労働参加率は一時期を除いて、97年以降ほぼ一貫して低下し、ようやく足元で下げ止まっている。つまり、男性には潜在的な失業者が多く存在する可能性があり、これを考慮すると、男性の失業率は統計上見られるよりも高かったといえよう。

当然ながら、この議論は、男女の就業者を単に頭数としてカウントしただけで、個々の置かれた立場、例えば、正規社員か非正規か、フルタイムかパートタイムかなどを考慮して検討しているわけではない。また、労働参加率の低下トレンドの背景には、高齢化が進展し、相対的に参加率の高い層が労働市場から退出する要因が大きく、米国よりも日本の方が早くからその影響が顕在化してきたとみられる。ただし、20代後半から30代前半の若年層の低下幅も大きい。

見かけ上失業率が改善していても、労働市場の実態はそれほど改善していないという議論は、日本だけでなく、米国でも現在進行形で指摘されている。6月の雇用統計では、注目される非農業雇用者数の増加幅は市場予想を大きく上回り、失業率は6.1%とリーマン・ショック以来の低水準となった。一方で、労働参加率は62.8%と1978年以来の低水準で下げ止まりつつあるものの、上昇に転じたとはとても判断できない(なお、米国の労働参加率の分母は16歳以上人口)。賃金上昇率も抑制されたまま、労働市場の需給は十分に引き締まったとは言えず、雇用環境の量的改善が進んでいるが、質的改善は道半ばである(※1)

そもそも、米国では、8秒ごとに一人生まれ、13秒ごとに一人亡くなり、40秒ごとに一人移民が増えている(米商務省調べ)。この結果、13秒ごとに人口が一人増える計算になり、現在3億2,000万人弱の人口は、2050年前後には4億人に達すると予想される。従って、今後も人口が増え続けていくとみられる米国と少子化による人口減少が始まっている日本では、労働参加率が下げ止まったとしても、それが意味するところは異なる。少なくとも日本の場合、労働参加率が上昇しなければ、労働力の現状維持もままならない。

そこで、政府は2013年6月に発表した成長戦略のなかで「働き手の数(量)の確保と労働生産性(質)の向上の実現」のために、労働制度改革や大学改革の他に、女性の活躍推進や若者・高齢者等の活躍推進、高度外国人材の活用などを具体的に掲げた。2014年6月に公表された成長戦略改訂版では、25~44歳の女性や若者・高齢者の就業率がそれぞれ上昇し、この1年間の進展度合いが確認された。ただ、いずれも長い目でみれば貴重な成長の資源となるだろうが、足元の人手不足を解消する即効性はない。女性の活躍の陰に隠れてしまった感のある(若者・高齢者を含めた)男性にも再注目すべきだろう。

(※1)大和総研 経済調査部 笠原滝平、ニューヨークリサーチセンター 土屋貴裕 「米国の労働市場は堅調な量的改善が続く 2014年6月の米雇用統計:ただし質的改善は道半ば」(2014年7月4日)参照。

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