ビジネスをしやすい国になるために必要なこと

2014年1月29日

先週(1月22日)、安倍首相はスイスで開催された世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)に出席し基調講演を行った。アベノミクスをアピールするなかで、“外国の企業・人が、最も仕事をしやすい国に、日本は変わっていく”とし、法人税改革にも取り組む意欲を示した。既に、経済財政諮問会議(1月20日)の場でも、安倍首相は、法人税を考える際に必ずしもレベニュー・ニュートラルに拘らない旨を述べていた。

単純に法人税率が低くなれば、国内企業だけでなく、海外企業の日本進出を促す効果も期待される。というのも、外資系企業が日本国内で事業展開する際の阻害要因として挙げる要因のトップがビジネスコストの高さであり、具体的な中身として人件費に続いて税負担、それから事務所賃料、社会保障費の負担となっている(※1)。従って、法人税減税は、対内直接投資を段階的に増やそうとしている成長戦略にも合致した施策といえるだろう。

ただ、法人税率さえ引き下げればOKという考え方はやや短絡的かもしれない。世界銀行が発表したビジネス活動の容易度の総合ランキングによると(※2)、日本は189ヵ国中27位と決して低いわけではないが、高所得国ほど順位が高いという特性を踏まえて、対象をOECD加盟国に限定すると前年と同じ34ヵ国中15位にとどまっている。総合ランキングは全10項目で構成されるが、日本の場合、破綻処理のしやすさ(全体で1位)のように順位が高い項目もあれば低いものもある。後者の例としては、納税のしやすさ(同140位)や開業のしやすさ(同120位)、建設許可取得のしやすさ(同91位)などが挙げられ、対内直接投資や海外企業の進出を促すにはこれらのランキングを引き上げることが手っ取り早いはずだ。

しかし、納税ランキングとそれを構成する総税率の関係をみると、日本と同じような総税率帯(50%前後)の国であっても、納税ランキングが30位前後から100位を超えている国まで広範囲に分布している。総税率が低い=納税ランキング上位という関係が必ずしも成立していない背景には、納税ランキングに納税回数や納税にかかる時間という要素も考慮されているからである。世界銀行は、総税率はビジネス活動の容易度ランキングに含まれる30余りの指標の1つにすぎず、総合ランキングに及ぼす影響はわずかであると指摘する。

さて、安倍首相は就任から一年余りの間に延べ30ヵ国以上を訪れている。今年に入ってからも、中東・アフリカを訪問した翌週には冒頭のダボス会議に参加し、国会における施政方針演説を挟んで先週末はインド訪問と、決して短くない距離をフットワークの軽いビジネスマンのように往復されている。もし民間機で移動していたら、さぞかしマイレージが貯まっているだろうなと羨んでしまう(ちなみに、1月の移動距離を概算するとエコノミークラス普通運賃で4万マイル超に)。そういえば、1000万マイル貯めることを目指したビジネスマンの米映画“Up in the Air(邦題 マイレージ、マイライフ)”があったが、主人公のような仕事はなかなか真似できない。

(※1)経済産業省 第46回 平成24年外資系企業動向調査(平成23年度実績)
(※2)“Doing Business 2014: Understanding Regulations for Small and Medium-Size Enterprises”
ビジネス活動の容易度ランキングと、OECDがまとめる製品市場規制指標によるランキングや、世界経済フォーラムが発表する世界競争力指数によるランキングには高い相関関係がみられると世界銀行は指摘している。

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