金融市場の混乱でバーゼルⅢが骨抜きになる恐れ

2011年9月7日

  • 資本市場調査部 金本悠希
2008年秋のリーマンショックを受け、国際金融システムの強化を目指して昨年末に合意されたバーゼルⅢ(国際的な銀行の自己資本規制)が骨抜きとなる恐れが出てきた。欧州の債務危機がスペイン・イタリアに波及するなど、足下の金融市場が混乱していることがその背景にある。

そもそもバーゼルⅢの規則文書は、バーゼル銀行監督委員会によって示される規制内容のモデルにすぎず、各国が国内法を制定することによって初めて各金融機関に適用される。欧州では7月に、バーゼルⅢを域内に適用するためのEC域内規制案を公表した。EC域内規制案は、INGやロイズなどグループ内に保険会社をもつ金融グループにおいて、保険会社に対する出資が普通株等Tier1資本から控除されないなど、バーゼルⅢより緩い規制となっている。その背景としては、バーゼルⅢが適用される2013年以降、必要な資本の水準が引き上げられるにもかかわらず、債務危機の影響で資金調達コストが上昇し、資本の確保が困難になっていることがあると考えられる。

実は、バーゼル規制の内容が各国によって緩和されるのは今回が初めてではない。2009年7月に、金融危機で特に問題となった証券化商品とトレーディング勘定等に関する取り扱いに関して、バーゼルⅡを応急措置的に強化する見直しが行われたところ(いわゆる「バーゼル2.5」)、当初その実施時期は2010年末までとされていた。しかし、2010年5月に欧米当局が突如、その実施時期を2011年に先送りすることを発表し、それを追認する形でバーゼル銀行監督委員会も正式に実施時期を2011年末までに延期した。

バーゼルⅢはG20サミットにおいて各国首脳によって合意されたものであり、その内容は重い。しかし、金融行政の責任を負う各国当局者は現実的な対応をとらざるを得ないため、特に現在のように金融市場が悪化している状況の下では、上記の例のようにバーゼルⅢを緩和したり、実施を延期したりすることは避けられないのかもしれない。ただし、その場合も、バーゼルⅢを合意通りに適用する国の金融機関が不利になるようなことはあってはならない。バーゼル銀行監督委員会は各国の競争条件が実質的に公平になるように対応していく必要があろう。

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