どうすれば外需を増やせるか

2010年8月17日

  • 経済調査部 渡辺浩志
輸出の減速感が強まってきた。円高や循環的な世界経済の回復モメンタムの鈍化の影響とみられる。また、先般G20サミットの主要テーマとなった各国の財政再建が、11、12年に本格化する。世界同時的な財政再建は世界経済に対し大きな下押し圧力となるおそれがあり、輸出を取り巻く環境は厳しさが続く。もちろんこうしたことは織り込み済みのストーリーだが、足下の輸出の減速やそれにともなう国内生産の減速、設備投資への慎重なスタンスなどは、想定以上となっている。日本経済は安定成長に向け、正念場を迎えている。

より長い視点で、政府の外需に対する戦略を見ると、菅政権では鳩山政権から大きく方向転換し、アジアの成長を享受する策を前面に打ち出した。目の前で成長する市場に進出しない手はなく戦略として間違っていない。しかし、アジアなど新興国の需要のボリュームゾーンは低・中付加価値品が中心となる。そこは新興国自身も参入する薄利多売の市場だ。目先の需要を取りに行けば日本企業は海外進出を急ぎ、国内産業の空洞化が進む。それが企業の成長戦略となっても日本の成長戦略にはなり難い。

これからは新たな外需を開拓する発想が必要だ。そのために輸入を増やして生産資源の配置転換を図り、より付加価値の高い分野へ進出しなければならない。また、インフラとシステムの一体輸出などでは、内需向けの成熟産業にも商機がある。観光客の呼び込みなど海外需要を国内に誘導することも輸出戦略だ。政府には、円高の行き過ぎを是正することのほか、特定分野を選別し育成するのではなく、規制や税制などのボトルネックを取り除き、民間の競争を促進して、市場が次の成長分野を見つけ出す手助けを担うことが求められる。

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