ソーシャル・ネイティブのために

2009年12月3日

来週12月7日からCOP15(第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議)がコペンハーゲンで開催されるが、日本でも環境イベントが予定されている。12月10日から開催されるエコプロダクツ展(※1) は日本最大級の環境展示会と銘打っており、1999年以来、参加団体数も来場者数も右肩上がりに増加している(図表1)。全体の来場者数以上の伸びを示しているのが、社会科見学としての子供の来場数である。家族や友人と来場する子供もいると思われるため、実際の来場者数はもっと多いだろう。テレビやコラムで紹介された(※2)ように、周りを見渡すと環境配慮や社会貢献に対して気負わずに接することができる若者が増えているような気がする。こうした世代を、デジタル・ネイティブになぞらえてソーシャル・ネイティブと呼ぼうと思う。デジタル・ネイティブはネットを自在に使いこなすが、「皆が楽しめるもの」や「社会に役立つもの」を目的とした起業もあり、ソーシャル・ネイティブと重なるところがある。今後、こうした若者が当たり前になり、(多分に期待をこめつつ)「社会貢献」を生来のものとする社会(※3)に移行していくだろう。

こうした社会では、企業の非財務情報(いわゆるESG-環境Environment・社会Social・ガバナンスGovernance-情報)公開に関する対応が、今まで以上に重要になってくると思われる。理由は、グリーンピースが四半期ごとに行っている「環境に優しい電機メーカー・ランキング(※4)」に見ることができる。グリーンピースは捕鯨反対などの過激な活動で知られる団体であり、このランキングに対する批判もあるが、公開が重要なことのわかりやすい例だと思う。ランキングはウェブサイトの公開情報にもとづき、「化学物質管理」、「CO2排出量」、「再生可能エネルギー使用量」など15項目について、1項目あたり「良い(3+)」から「悪い(0)」の4段階で評価される(※5)。2009年9月ランキングの首位はノキアで、日本企業の中では東芝の5位が最高位となっている。ESG情報の表示について世界標準がなく、グリーンピースの求める情報開示に応える義務があるわけでもない。しかしグリーンピースのように環境に対する取り組みをウェブ上の公開情報のみで評価するような機関の存在は、情報の公開と共に、情報のわかりやすさも要求されているということを示唆している(※6)

CSR報告書(持続可能性報告書)においては、GRI(Global Reporting Initiative)ガイドライン(※7)に基づく記述をする企業も多くなってきた。有価証券報告書での気候変動情報掲載のガイドライン検討(※8)や、商品のライフサイクルにおけるCO2排出量を表すカーボンフットプリント制度の試行(※9)など、環境情報表示の制度化の流れも出てきている。公平性のある表示方法や、情報の正確性の担保、表示のために要するコストなど、課題は多い。しかし有価証券報告書であれ、食品の成分表示であれ、PCや車の性能表示であれ、改良を重ねながら整備されてきた。情報公開に消極的な企業は、まず公開することから始め、すでに公開している企業は公開方法や内容を改善していくことが求められる。

図表1エコプロダクツ展 入場者数と参加団体数

(※1)2009年は12月10日(木)~12日(土)の3日間、東京ビッグサイトで開催される。「日本最大級の環境展示会エコプロダクツ2009」
(※2)NHKクローズアップ現代 2007.2.21放送「金もうけだけが仕事じゃない~動き出す社会貢献ビジネス」、ダイヤモンド・オンライン 連載『「社会貢献」を買う人たち』 2009.8.18「途上国への学校建設から地雷除去まで。借金してでも「社会貢献」にハマる若者達」
(※3)「プチ社会貢献」も浸透してきている。 Fuji Sankei Business I 2009.11.25『広がる「寄付付き商品」 買い物促す“プチ貢献”』
(※4)グリーンピース・ジャパン「環境に優しい電機メーカー・ランキング」
(※5)15項目のうち有害物質とエネルギー効率の2つにおいては2倍の得点が与えられるため、51点満点となる。単純化するために10点満点に換算される。
(※6)ノキアの「環境」ページ、東芝(米国)の「環境」ページ
(※7)「事業者が、環境・社会・経済的な発展に向けた方針策定、計画立案、具体的取組等を促進するのための国際的なガイドライン。」 出所:EICネット 環境用語集
(※8)日本公認会計士協会 『「気候変動関連情報審議会(CDSB)報告フレームワーク(公開草案)」 の翻訳完了について』
(※9)2009年3月に試行販売され、この10月からは実際の商品販売も始まった。経済産業省「カーボンフットプリントマークを貼付した製品の市場流通開始について」



 

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