監査役の「独任制」とガバナンス

2008年9月10日

  • 経営戦略研究部 藤島裕三
会社法は大会社(※1)かつ公開会社(※2)に対して、監査役会設置会社か委員会設置会社の採用を定めている。このうち委員会設置会社は全上場企業の中で70社弱に止まり、ほとんどは監査役会設置会社として、半数以上の社外監査役を含む3人以上の監査役を選任している。

監査役は取締役の職務の執行を監査する機関で、取締役に対する事業報告請求や会社業務・財産状況調査などの権限を有する。調査の結果によっては、その内容を株主総会に報告したり、取締役の行為を差し止めたり、会社を代表して取締役を訴えるなどできる。

特に重要なポイントとして、監査役は「独任制」つまり単独で権限行使できる。ガバナンスの担い手として監査役が期待されている証左であるが、換言すれば「たったひとりの監査役が、取締役を株主総会で責めたり、司法に訴えたりできる」ということを意味する。

この独任制がクローズアップされたのが、今年6月に開催された荏原の株主総会で、計算書類の承認が求められたケースである。本来、計算書類は報告事項だが、同社の社外監査役が事業報告を承認しなかったため、会社側は決議事項にする必要があると判断した。

日本経済新聞(7月21日付)によると今回の荏原のケースは、「コーポレートガバナンスが機能した結果」として評価する声が多い。その一方で、「1人の監査役が不承認としただけで、総会の決議事項にしなければならないのか」といった不満も存在する模様である。

しかし、独任制だからこそ経営に緊張感が生まれるメリットを、否定するべきではない。そもそも監査役は「閑散役」と揶揄される程、機能不全が指摘されて久しい。強大な権限を持つがゆえに、社内者を配するなどして骨抜きにされてきたのが実情なのである。

ガバナンス不全の反省から数度の法改正で、監査役制度は強化が図られてきた。社外監査役の義務付け、監査役会の設置などが代表例である。その社外監査役の権利行使を「監査役会が止められない」というのは本末転倒で、むしろ積極的に協力すべき役割を持つ。

なお委員会設置会社の監査委員会は合議制なので、移行すれば独任制のリスクから逃れられるともされる。ただし委員会設置会社の場合、社外取締役が過半数の指名委員会があり、取締役の選任時点に牽制が働く。「ノーガバナンス」は有り得ないと心得るべきだろう。

(※1)資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社
(※2)発行する株式の全部または一部に譲渡制限を設けていない株式会社

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