買収防衛策は発動を予定しているのか

2007年7月18日

  • 制度調査部 金本悠希
ブルドックソース経営陣とスティール・パートナーズの争いは、東京高裁で新株予約権無償割当てが認められ、スティールの持分を低下させることが認められることとなった。この世界的にもまれな「買収防衛策」の発動の背後に、忘れてはならないポイントがある。

わが国で主流となっている事前警告型「買収防衛策」は、アメリカのポイズンピルが原型である。アメリカでは、ポイズンピルの発動は手続きミスによる1件のみであり、実質的に発動例はないと言われている。これは、アメリカ各州の会社法の中には、授権株式数の上限がないところがあり、敵対的買収者の持分を無制限に低下させることができるためと考えられる。要するに、発動させてしまうと買収者は致命的なダメージを受けてしまうので、そもそも発動は予定されていないのである。

一方、日本の会社法では、発行可能株式数が発行済株式数の3倍までに制限されているため、最大で4分の1までしか持分を低下させることができない。このように、日本の買収防衛策はダメージが限定的なこともあり、「発動ありき」と考えている者が多いのではないだろうか。しかし、政府の買収防衛策のガイドラインは、アメリカのポイズンピルを参考にしており、発動を予定していなかったと思われる。

そもそも政府のガイドラインでも、買収防衛策は平時に導入されるものを想定している。そう考えれば、今回のブルドックの措置のように、有事に導入され最初から発動を予定している場合は、いわゆる「買収防衛策」とは別物と考える余地もある。現に、東京地裁の決定では今回の措置は「買収防衛策」とは呼ばれていない。

では、発動する予定のない買収防衛策を導入することにはどういった意味があるのだろうか。それは、「買収後の経営方針等の情報を開示しなければダメージを受けるかもしれない」というプレッシャーを与えることによって、敵対的買収者に情報開示を強制するという意味がある。情報が開示されることによって、株主は、より企業価値を高められるのは敵対的買収者と現経営陣のどちらかを判断できることとなる。

買収防衛策については、持分を低下させる仕組みばかりクローズアップされているように思われる。しかし、今述べたように、本来の目的は株主が判断するために必要な情報を買収者に開示させ、経営陣による対案を示させることである。よって、敵対的買収者が自ら情報を開示し、時間を与えた場合には、買収防衛策は役割を果たしたことになる。そして、株主がその開示された情報と対案に基づいて、どちらが企業価値を向上させるかを判断するのである。もちろん、敵対的買収者の経営計画の方が企業価値を向上させると株主が判断すれば、それに従わなければならない。買収防衛策は、全ての買収を防衛できるものではない。

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