良い金利上昇か? 悪い金利上昇か?

2007年6月19日

  • 投資戦略部 成瀬順也
6月12日、米国長期金利の指標である10年国債利回りが5.30%へ上昇した。政策金利(FFレート誘導水準)の5.25%を上回り、逆イールド状態が解消。株価にとって「良い金利上昇か? 悪い金利上昇か?」の議論が喧しくなってきた。

中長期的な米国債利回りと米国株の関係について考えると、イールドレシオ(10年国債利回り÷S&P500予想益回り)は2001年頃まで安定的に推移していた。レンジの上限・下限に到達すると反落・反転し、大きく上方(株が割高)に乖離した2回は、いずれもブラック・マンデーやITバブル崩壊といった株価急落が待っていた。2002年以降、それまでのレンジである-1σ(標準偏差)~+1σより下方(株が割安)に乖離した要因は、当初エンロン、ワールドコムなどの不正会計問題だった。しかし、会計不信が徐々に収束し、イールドレシオが-1σ近辺にいったん戻った後、再度-2σ方向へと乖離したのは、需給要因による債券価格の上昇(長期金利の低下)によるものと考えられる。利上げが続くなど短期金利が上昇したにも拘らず、長期金利が上昇しなかった(それどころか低下した)ため、敢えて言えば、債券バブル的な様相を呈したのである。

需給面から見た要因は二つあろう。一つは、米国の企業年金などによる株売り・債券買いの流れ。ベビーブーマー世代の退職、つまり年金積み立てから受給への変化を控え、確定給付年金としては、予想される資金流出に合わせた年限の債券需要が高まったのである。となると、価格に関係なく、債券が欲しいということになる。しかし、この動きは既に一巡したようだ。そして、もう一つが、巨大な貿易黒字を背景にした中国の公的資金による米国債購入である。しかし、中国はドル資産のウェイト低下ならびに投資ファンドへの出資に象徴されるようなドル資産の米国債以外への多様化を予定している。圧倒的な米国債需要が、いつまでも続く環境ではなくなってきたのである。

となれば、景気後退も利下げも予想されていないなかで、逆イールドになる必要も、イールドレシオが大きく下方に乖離する必要も、なくなってくる。イールドレシオを見ると、株式は長期債に対して、まだまだ割安である。良い金利上昇であるならば、米国株急落を懸念する必要はなかろう。一般的には、景気拡大による金利上昇=良い金利上昇、インフレ懸念による金利上昇=悪い金利上昇と見る向きが多いようだが、どちらも株価に良い話ではない。あくまで、景気・インフレによる金利上昇=悪い金利上昇であり、債券から株への資金移動による金利上昇=良い金利上昇と考えられる。その意味で、今回は「良い金利上昇」と見ている。

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