IRの真のメリットは「経営改善効果」

2005年8月9日

  • 資本市場調査部 宇野健司

上場企業のIRが、ここ数年、徐々にではあるが、活発化してきている。筆者が担当している地方銀行業界においても、今回3行増えて、40行が東京で説明会を定期的に開催するようになっている(別表参照)。数年前から比べると、ほぼ倍増している計算になるし、内容も年々高度化してきている。

IRの効用としては、一般に、経営内容を外部によく知ってもらい、正しく(望むらくは、高く)評価してもらうということであろう。それは、全くその通りであろうが、実はIRの真のメリットは、「経営改善が促進される効果である」と、筆者は考えている。

普段、企業の経営トップは、特別なことがない限り、外部の専門家から厳しい指摘を受ける機会はないのではないか。株主総会という場はあるにせよ、アナリスト並みの突っ込んだ質問のやり取りがあることは稀であろう。外部の専門家との緊張関係が、経営改善への適度な刺激になっているということは、十分考えられることであろう。

また、IRにおいては、事前に資料を作成し、分かりやすくプレゼンテーションする必要がある。そのためには、その準備段階で、「現在、どのような経営課題があって、それをいつまでに、どのようにして具体的に解決するか」ということについて、論点整理して、頭の中をクリアにしておくことが不可欠である。そのような作業を通じて、経営側は戦略を検証し直す機会と、それを実行に移すきっかけを、結果として得ることになる。

つまり、IRのメリットは、(1)経営状態を正しく、タイムリーに、しかも継続的に、外部に理解してもらえる、(2)アナリストなど参加者との突っ込んだ質疑応答を通じた双方向のコミュニケーションによって、外部の厳しい眼にさらされ、経営をチェックしてもらい、結果として、経営改善への刺激を受けることができる、(3)外部に経営方針を説明するという機会を通じて、現状を客観的に分析し、経営戦略やその実施状況を定期的に再確認するきっかけとなり得る、ということにあると思う。

IRを定期的に行うということは、企業サイドにとっては、当初、苦痛を伴うものであるかも知れない。しかし、慣れてくれば、これほど経営改善を促すペースメーカーとなるものはない。もし、IRによって株価が上昇することがあるとすれば、それは上記の(1)のみならず、(2)や(3)による経営改善効果が大きいのではないかというのが、筆者の実感である。


作成:大和総研 上席研究員 宇野

 

 

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