アジアンインサイト
認知度向上に向けて

2015年7月16日

  • アジア事業開発グループ シニアコンサルタント 寺谷 宣夫

よい製品を作っていても市場での認知度が低いため売上増加に結びついていないという中小企業は少なくない。先日訪問した中小企業A社もその一つだ。社長と営業部長が対応してくれたが、まだ開業から日が浅く会社の発展戦略については的を射た説明は得られなかった。他方、製品についてはその用途、製造工程、製造の勘所、原材料調達の困難さなどについては、個別具体的に詳細にわたり説明してもらうことができた。

A社は製造特許を保有する会社から製造設備一式を導入して製品を製造しており、販売は専門商社に委託している。製造数量についても業界のリーダー的な元締め会社から数量が提示されるとのことで、販売戦略について自社であまり関与しておらず専ら製造に特化している様子だ。製品自体は新しいものであり市場での認知度不足から受注獲得は簡単ではないとのことであった。

工場を見学したがきちんと整理整頓されており非常にきれいだった。最小限の人員で工場が運営されている。工場ラインのオペレータには専門知識、ノウハウを有している若者を充てていた。社長の実家の家業が当該原料に関連した業務を行っているとのことで、社長は業界の本質的ノウハウを自然と持っている人だと感じた。工場は稼働開始後一年未満であり財務数値はまだないものの製品の認知度が向上すれば売上も伸びると感じた。

課題はいかにして製品の認知度を向上させるかである。まずは営業活動の活性化だ。営業は営業部長の担当だが、実質一人での活動だ。営業を活性化するためには商社に任せきりにはせず、自分たちも努力する必要がある。残念ながら今のところ販売ネットワークの不足は否めない。需要家との接点を探索して自ら認知度向上に努力する必要がある。当該製品は環境への負荷が少ないため将来性はある。コストコントロールを徹底すれば利益を生み出すことも可能だろう。ただし認知度向上には時間がかかる。

認知度向上において具体的に取り得る手段の一つとして効果的な試供品の無償提供を挙げたい。そのためにはまず購買の意思決定者が誰であるかを把握することが必要だ。そしてその意思決定者に対してどのような働きかけをしたら買ってもらえるかを具体的に検討することである。当該製品は建設土木現場での用途が比較的多い。製品の種類によって購入者の意思決定構造は異なるので一概に言えないが、施工計画を策定する設計技術者に施工計画図面の作成過程において、使用する部材として汎用品の名称ではなく、個別製品名、ここではA社の製品名を特定して記入してもらうことが肝心である。

ではどうしたら決定権限を持つ技術者に、自社の製品名を設計施工図面に記入してもらえるのだろうか?それには、技術者に、その製品の特性、価格、長所、短所などをよく理解してもらい、採用することに踏み切ってもらうことが重要である。決断に至らないのならば、何が引っ掛かっているのか、何が障害になっているのかを正確に把握し、これを取り去ることが必要である。

A社製品の場合は、近隣地域での実績がないため、万一不具合が出る場合を恐れて採用に踏み切れない、ということが挙げられる。ではどうすればよいか?試供品として一定数量を無償提供して使ってもらい、不具合が出ないこと、問題なく施工できることを証明するしかない。試供品の費用は営業費用と割り切って、とにかく担当者の不安を払拭することが先決である。営業費用を使うのであればなるべく効率的に、よい影響をもたらすような使い方をすべきだ。その施工が後々の良好なモデルケースとして活用できるようにすべきである。また数量も中途半端ではだめで、一定の影響力をもたらすような数量を提供すべきである。技術力はありよい製品を作っているものの製品の認知度不足で悩む中小企業には、ぜひ工夫をこらして本当の実力を市場で訴求してもらいたい。

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