アジアンインサイト
マイクロファイナンスというミャンマー進出形態

2013年2月21日

  • アジア事業開発部 コンサルタント 吉田 仁

ミャンマーにおいてマイクロファイナンスが解禁された。新規事業者にとって参入障壁が低く、日系金融機関にとってのビジネスチャンスを秘めている。本稿では、2011年11月に施行されたマイクロファイナンス法(Microfinance Business Law)の概要を説明するとともに、新規参入の動向、そして今後のマイクロファイナンス業界の展望について述べたい。

マイクロファイナンス法によれば、マイクロファイナンス事業者(以下、MFI; Microfinance Institute)としてライセンスを得ることができるのは、NGOはもちろん事業会社や金融機関(※1)などで、内資、外資は問われない(第2条)。そしてMFIの事業内容は、資金貸与(マイクロクレジットの付与)はもちろん、預金受入、送金、保険などの幅広い事業が認められる(第29条)(※2)。資本金に関する制約も大きくなく、MFIの監督機関であるMyanmar Microfinance Supervisory Enterprise(MMSE)が定めた手続書によれば、最低資本金は非預金取扱MFIで1,500万Kyat(約150万円)、預金取扱MFIで3,000万Kyat(約300万円)に過ぎない。

MFIが法的に認められ、かつ上述のようにその参入障壁が低く、法律上は幅広い事業内容が可能であるため、新規事業者が急増しつつある。2009年にはINGO(国際的非政府機関)を中心に6つのMFIしか存在しなかったが(※3)、2012年11月時点で118ものMFIがライセンスを付与されている(※4)。そして興味深いのは、そのうちの40事業者が民間企業によるMFIである点だ。従来は、INGOによる人道的支援の側面の強いマイクロファイナンスが中心であったが、収益性と成長性を求めた商業的マイクロファイナンスが急速に拡大するのではないだろうか。

新規参入事例を2つ紹介する。1つ目はミャンマーの大手民間銀行(※5)。ヒアリングによると、すでに子会社を設立しMFIのライセンスを取得済みとのこと。CSRとしての観点はもとより、MFIの収益性の高さや、より広範な顧客層の開拓が目的であるようだ。

2つ目の事例は、商業的マイクロファイナンスの代表格であるカンボジアのACLEDA銀行。ACLEDA銀行は1993年にカンボジアの国内NGOとして設立されたMFIだ。MFIとして成長したのち、2003年に銀行ライセンスを獲得。238支店(2012年末)、従業員数7,146名(2011年末)を抱える一大銀行に成長した。そのACLEDA銀行がミャンマーに100%子会社を設立し、MFIライセンスを獲得した(※6)

ACLEDA銀行はカンボジアと同様に借入人に合わせた多様なサービスを提供するのではないか。外資を含めた民間企業がMFIとなり、多様なサービスを展開することは、マイクロファイナンスを急速に普及させ、その市場を拡大させよう。

外資金融機関のミャンマー進出の一形態として、銀行業という選択肢に加え(※7)、マイクロファイナンスという進出形態の検討の余地があるのではないだろうか。例えば、CSRの観点を強調すべく内資銀行との合弁での銀行によるMFI参入や、中小企業や起業家のためのノンバンクによるMFI参入、マイクロ保険のための保険会社によるMFI参入、資金貸与のみならず農作物買取機能や資金決済機能を兼ね備えた農協のようなMFIのビジネス形態も考えられよう。

ただしMFI参入にあたり、与信管理の困難さに加え、以下の3つのリスクが考えられる。1つは資金貸与先の問題。マイクロファイナンス法にて貧困削減が目的として掲げられているなか(第3条)、資金貸与先の自由度について今後の運用実態を見極める必要がある。2つ目は手続書による貸出金利規制。3つ目はマイクロファイナンス法改正や手続書改定による規制強化リスク。これらリスクの詳細については、また改めてご紹介したい。


(※1)ただしMFIの監督機関であるMyanmar Microfinance Supervisory Enterprise(MMSE)が作成した手続書によれば、当面は内資の民間銀行に対してマイクロファイナンスのライセンスを認可しないとのこと。
(※2)MMSEの手続書によれば、当面は資金貸与と預金受入のみしか認可されない。MFIが経験を積み、本法律を遵守することが確認できれば、その他の事業を実施できるようになる。
(※3)MFIの法的枠組みが存在しなかった2009年時点でも農業・灌漑省などとの覚書を根拠にMFIは事業展開していた。
(※4)MMSEからのヒアリング。ただしライセンスを付与された企業の事業開始有無については確認できていない。
(※5)注1にて内資民間銀行はライセンスを取得できないと述べたが、本事例を見る限り銀行子会社であればライセンス取得の可能性があるようだ。
(※6)ACLEDA銀行ニュースリリース(2012/11/19)より。
(※7)Bloomberg(2013/2/5)によると、早ければ2013年4月より外資金融機関がミャンマーで銀行業を実施できる見通し。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

コンサルティング

コンサルタント

セミナー