中国にも日本のゴールデンウィークに似ている大型連休があり、「黄金週」(中国語で黄金周(huang2jin1zhou1))と呼ばれている。これは、中国政府が経済効果を狙って1999年10月1日から導入した制度である。現在、「黄金週」は春節(旧正月)から始まる1週間、国慶節(建国記念日、10月1日から始まる1週間)、年2回設定されている。


「黄金週」という制度が導入された背景には、1997年東南アジア金融危機に際し、国内経済を牽引するため、旅行などの消費活動を促進させるという政府方針があった。消費は社会経済の均衡的発展を測る重要なシンボルであり、国民の所得水準に関わるだけでなく、国民の消費概念の更新、レジャー時間の充実とも密接な関係がある。余暇の時間が多くなるにつれ、人々の生活内容が豊かになった。同時に、生活水準の向上に伴いレジャー人気が高まり、飲食、ショッピング、観光、フィットネス、娯楽などの消費への欲求も昔より大幅に増加した。これらは中国人が基本的な生活需要への満足から、精神をも充足する生活への憧れに転換し、伝統的な生産—消費パターンから、消費—生産パターンに転換することを表している。


「黄金週」という制度を導入する主な目的は「休日経済」を推進して、内需を拡大するということである。この1週間の休暇は、旅行、ショッピングなどの消費活動が促進され、まさに行楽シーズンの「黄金週」となっている。


中国国家観光局と中国国家統計局が共同で発表したデータによると、今年の国慶節と中秋節に伴う8連休(2012年9月30日~2012年10月7日)期間中に国内の主な観光名所を訪れた観光客数が前年同期比21%増の延べ3425万人となり、過去最高を記録したという。休暇期間中に高速料金が大型車などを除き無料になったため、マイカー利用の旅行者が大幅に増えた。観光業の収入は25%増の17億6500万元(約220億円)となり、国内小売売上高も前年同期比15%増の8006億元(約10兆75億円)に上った。中国経済が減速する中、観光ブームで国内消費が喚起された形だ。


ところで、「黄金週」は国民経済の成長に大きく貢献する一方で、休暇集中によりさまざまなデメリット、例えば、レジャー施設や宿泊施設、交通機関の混乱・渋滞、それらの利用料金の高さとサービスの低下などのマイナス面が指摘されている。


今年の国慶節の連休が始まると、各地の高速道路で大渋滞や死亡事故が発生したとのニュースがあちこちのメディアによって報じられた。また、各地の観光地で崩落の危機が生じたり、中国甘粛省郊外の広大な沙山で「ラクダの過労死」が発生したりと、旅行者や観光客の急増が原因と思われる現象が相次いだ。しばらくの間は、「黄金週」中の混乱ぶりが話題となるだろう。


客観的に見ると、大型連休がもたらす混乱は、中国だけでなく、世界各国が直面している共通の問題だろう。国民が同じ時期に一斉に旅行に出かければ、その期間社会に大きな負担がかかるのは当然のことで、事故の発生も避けられない。これらの問題を1夜のうちに解决することは不可能だが、ほかの国の成功例を模範にし、長所を持って短所を補うことができれば、状況を少しでも改善できるはずだ。


 


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