アジアンインサイト
中国の社会保障について

2012年2月23日

  • 大和総研(上海)諮詢有限公司 張雋
一人っ子政策を実施して以来、すでに30年以上経って、中国の人口もピークを迎えつつある。この先、団塊世代の退職に伴って、世界最大の高齢社会国になるともいわれる。更に、開国政策によって、中国での就業、定住する外国人が年々増えている。社会保障も、ここ数年、加入条件の変更や、外国人の加入など、中国の社会保障政策が頻繁に変更され、昨年10月から外国人も社会保険法の対象となった。日系企業にとって、特に気になるのは外国人の社会保障の加入であるが、現在のところ、北京市を含めた一部の都市でのみ外国人の社会保険加入について整備が進んでおり、今後、全域まで拡大する見込みだ。

さて、中国の社会保障にどんなものが含まれるか、具体的にどんなものなのか、日本の社会保障と比較して、その相違点がどこにあるのか?

中国の社会保障は主に養老保険(年金)、医療保険(公的医療保険)、失業保険(雇用保険)、工傷保険(労災保険)、生育保険(育児保険)の五つから構成される。日本の社会保険と比較すると、育児保険が医療保険から分離されているのと、介護保険が盛り込まれてないのが特徴だ。更に、サラリーマンを対象とする企業参加、フリーター、自営業などを対象とする個人参加に大別され、外国人駐在員は企業参加に当たるという。なお、社会保障に加入する外国人でも、諸条件(加入年数など)をクリアすれば、中国国民と同等の社会保障を受け取れる。更に、保険料は、地方自治体によって異なるが、本稿では上海を一例として、紹介する。


【養老保険】
すでに周知の通り、日本の年金は2階建て構造で、ベースの一階部分は国民基礎年金であり、サラリーマンや公務員などを対象となる厚生年金・共済年金はその2階にある。

一方、中国の年金は地方自治体に統括管理されるため、保険料算定基準や保険料率などが異なる場合がある。まず、保険料率について、上海市の場合、企業参加は個人負担分が保険料算定基準(※1)の8%で、企業負担分が保険料算定基準の22%となる。一方、自営業やフリーターなどの明確に所得のない者は、所在市、自治体の平均給与の30%となり、全額自己負担である。

受給要件は加入期間が15年である。加入期間が15年に満たない場合、加入期間15年間まで保険料を継続して支払うという。

また、受け取るに当たっては、国籍を問わず、男性は一律60歳から、女性は50歳から(女性管理職は55歳から)である。また、外国人の場合、加入期間が継続してなくても、合算期間が15年に達すれば、受給できる。ただし、外国人が受給する際に、一年に一度生存証明書の提出が義務つけられるという。

(※1)保険料算定基準は上限(平均給与の300%となる)と下限(平均給与の60%となる)があり、被保険者の前年度の給与が上下限を超えない場合、給与となる。超える場合、その上下限となる。
健康保険、失業保険、労災保険、生育保険の保険料計算においても共通である。


【健康保険】
日本の公的医療保険は健康保険と、国民健康保険に大別され、健康保険もまた、その保険者によって、全国健康保険協会管掌(協会けんぽ)と組合管掌とに分けることができる。

一方、中国の公的医療保険は年金と似たような仕組みを採用している。保険料について、企業参加の場合(上海基準)、個人負担部分が保険料算定基準(年金の保険料算定基準と同様)の2%、企業負担部分が保険料算定基準(年金の保険料算定基準と同様)の12%で、個人負担部分の全額、企業負担部分の一部を医療口座に積み立てるという。更に、日本が生涯保険料を支払い続けるのに対して、中国は定年までで、支払い完了となり、生涯公的医療保険を享受できるという。

健康保険の給付についても、日本は原則として3割を自己負担するのに対して、中国の場合、1年毎にカウントし、まず、医療口座の積立金を取り崩したあと、超過分を1500元まで自己負担し、なおも超過した場合、超過した医療費の自己負担が5割(※2)となる。また、日本には、後期高齢者医療制度があるが、中国にはこのような制度が設けられてないという。

(※2)就職時期によって異なる。


【失業保険】
失業(雇用)保険は、労働者が失業した場合に保険給付を行うものである。この点においては、日本も中国も同様だが、保険料率について、日本の場合、仕事の種類によって異なるのに対して、中国(上海)は一律、保険料算定基準(年金の保険料算定基準と同様)の2.7%で、企業負担が1.7%、個人負担が1%である。


【労災保険】
労災保険は業務上の事由または通勤災害による労働者の負傷、疾病、障害、または死亡に対して保険給付が行われるものである。この点において、日本も中国も同様だ。中でも、通勤上の災害も労災保険対象と認定される。保険料について、中国の場合、基本的に保険料算定基準(年金の保険料算定基準と同様)の0.5%で全額企業負担だが、仕事の危険度によって、最大3%までである。


【生育保険】
生育保険は中国独特の社会保障保険である。出産一時金などが含まれている。日本では、生育保険がないものの、出産に関する保障が健康保険に含まれている。


図表 中国(上海市)、日本(東京都)の社会保障


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