持株会社解消と持株会社化
2012年06月20日
持株会社の解消の動きが活発になっている。
持株会社を解消した、または解消する予定の会社としては、雪印メグミルク・富士電機・札幌北洋ホールディングス・日本製紙グループ本社・JVCケンウッド等がある。
持株会社を解消した、または解消する予定の会社としては、雪印メグミルク・富士電機・札幌北洋ホールディングス・日本製紙グループ本社・JVCケンウッド等がある。
持株会社の解消を論じる場合、そもそもどういった理由で「持株会社」になり、どういう理由で「持株会社の解消」を決定したかということを、個別に見ていく必要がある。
持株会社化に至る背景には、大きく2つのパターンがある。
1つは、「統合型」で、2つ以上の企業が統合のための一つの手法として選択するパターンである。企業統合としては、合併が最も直接的な方法ではあるが、シナジーを発揮する上で障害が出る可能性もあることから、より緩やかな方法として「持株会社」が選択される。組織再編としては、共同株式移転が代表的な例である。当初から合併を目指しているような場合は、一定期間経過後に、持株会社が解消される。
もう1つは、「分社型」で、多くの場合、一社が主要な事業を分離して、本体は持株会社に移行する。組織再編としては、会社分割が代表的な例である。持株会社とする目的は、各社様々ではあるが、一般的には、下記のような事項が多い。
- 経営と事業の分離による意思決定の迅速化
- M&A等機動的な組織再編
- コーポレート・ガバナンスの強化
- 経営者人材の育成 等
持株会社の解消について、事例をみると、「統合型」で持株会社化を行ったケースが多いように思われる(雪印メグミルク・札幌北洋ホールディングス、日本製紙グループ本社・JVCケンウッド等)。
札幌北洋ホールディングスの例をみてみる。2001年4月に、北洋銀行と札幌銀行が株式移転により、札幌北洋ホールディグスを設立した。経営統合効果を早期実現するため、両行の合併、システム統合、店舗統廃合等を行った。当初の目的を達成し、経営環境の変化に対応するため、2012年5月に、ホールディングスと銀行の合併を決断した(合併期日は2012年10月1日を予定)。
札幌北洋ホールディングスを初めとする、これらの企業は、持株会社の解消の目的を、意思決定の迅速化や更なる効率化等としている。持株会社の解消の動きといっても、単純なものではないことが、このことからも理解できるだろう。
一方、持株会社化を決定する会社も多い。例えば、王子製紙・リクルート・全日本空輸・ユニー等である。
製紙業界の二強の一角である日本製紙グループ本社は持株会社を解消し、もう一方の一角の王子製紙は持株会社化を決断した。
1997年の独占禁止法の改正により、持株会社が解禁されて以来、持株会社制度を導入する会社は年々増えており、経営戦略のツールとしての持株会社は珍しいものではなくなってきた。企業が置かれたステージによっては、持株会社を解消する場合も当然出てくるだろう。いずれ、一つの会社で、M&A等により規模の拡大を志向する時期は持株会社を選択し、リストラが一巡化した後に持株会社を解消する、必要に応じて再度持株会社化する等の柔軟な企業運営を行う会社も出てくるのではないか。
持株会社解消の動きは今後もあるだろうが、並行して、M&A等の「攻め」の持株会社化を選択する会社も新たに出てくるものと考える。
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- 執筆者紹介
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コーポレート・アドバイザリー部
主任コンサルタント 真木 和久