2110年の日本

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2012年02月24日

  • 木村 浩一
国立社会保障・人口問題研究所は、5年毎に「日本の将来推計人口」を発表しているが、1月に公表された平成24年1月推計によると、日本社会は長期にわたって人口減少、高齢化が進むと予測している。日本の総人口(出生中位、死亡中位)は、2010年の1億2,805万人が50年後の2060年には4,132万人減の8,673万人に減少し、65歳以上の人口の比率は23%から40%へと上昇する。生産年齢人口(15~64歳)1人で子ども・高齢者1人を扶養するという厳しい社会である。

国立社会保障・人口問題研究所の推計は、50年後の推計の他に、100年後の参考推計も発表しているが、それによると2110年には総人口は4,286万人にまで減少する(出生中位、死亡中位)。現在の人口の1/3に減少してしまう。

また、予測のメインシナリオは出生中位、死亡中位推計だが、出生率が現在より低下すると仮定する出生低位、死亡中位推計でみると、2110年の人口は現在の1/4の3,086万人に減り、また、2075年以降、65歳以上の人口が生産年齢人口を恒常的に上回るようになる。10年以上にわたって給与所得者の給与が減少し、また、非正規雇用が増えている中では、未婚率の上昇、出生率の低下を想定することもあながちありえないシナリオとは言えないだろう。

メインシナリオ通り人口が減少すると(人口予測は、経済予測の中では確度が高い)、日本国家の破綻は免れないだろう。年金制度を、現役世代が払い込んだお金を高齢者に支給する賦課方式から自分で積み立てたお金を老後に受け取る積立方式に全面的に切り換えないと、日本の年金は維持できないだろう。

国債も将来世代への負担の先送りだが、国債の残高が現状から増えないとしても、1人当たり国債残高は、現在の約520万円が2060年は約770万円、2110年には約1,560万円と3倍に増えていく。

将来世代は、自らの議決権を行使する前に、前の世代の年金の原資の支払いや国債の償還のために働くというやりきれない一生を送ることを運命づけられている。親の借金ならば子供は相続を放棄する権利をもつが、国の借金からは国民は逃げられない。

この状況から抜け出すためには、現在の国民が負担を上回る受益を受ける財政構造を抜本的に改めるとともに、人口構成も変えていく必要がある。そのためには、(1)社会保障給付の削減、(2)租税負担の拡大、(3)年金の賦課方式から積立方式への変更、(4)人口増加策の積極的な採用、(5)移民の積極的な受入れ、を速やかに実行すべきだろう。

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