目で景気を計る

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2011年11月01日

  • 笠原 滝平
私は今、東京駅付近の八重洲というビルが密集した街を眺めるところで仕事をしている。毎日同じ経路で会社へ向かい、同じデスクで仕事をし、窓を見れば同じ景色を眺めている。そのような日常の中、近ごろ街を見渡していて一つの異変に気がついた。それは街でよく見かける看板の色だ。建物や自然などの景色が数日、数週間で変わることは少ないが、看板を初めとする広告は短ければ一日、数時間で変わることがある。

リーマン・ショック以降、八重洲のビルの屋上は多くの貸し看板募集の広告が並んでいた。本来は企業などの広告で彩られるところが「広告募集」の文字と貸し看板業者の連絡先ばかりが並んでいた。そのような風景に慣れ始めていたが、また徐々に企業の広告で様々な色に彩られ始めているように感じる。

広告費は非常に景気に敏感な指標として知られる。下図をご覧頂くとわかるとおり、広告費は経済成長とほぼ等しく推移することがわかる。企業は景気が良くなると広告費を増やし、逆に景気が悪くなりリストラの必要が出てくると、早い段階で広告費を削ることが多い。人件費などに比べて広告費は変動しやすいため、広告は目で景気を計れる非常にわかりやすい指標であると考えている。

日本経済は震災の影響や海外経済の減速などにより、まだまだ順調な成長とは言いがたい。特に、経済指標が改善しているなど数字を見てもなかなか実感は湧かないものである。しかし、彩られてきた看板を眺めていると、日本も緩やかながら改善の途にあるのかなと思わせるところがある。

どの商品を買おうかなど消費者目線で看板を見るところに加え、エコノミストとして看板を見てみてはどうだろうか。日本経済の変化を敏感に感じ取れるかもしれない。今後も企業の広告で街が彩られることを願うばかりである。

広告費とGDPの関係

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