再び「世界を変える四つの人口メガトレンズ」

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2011年02月16日

  • 木村 浩一

チュニジア、エジプトなど、中東、北アフリカのイスラム諸国の独裁政権がドミノ倒しのように相次いで崩壊した。その背景には、この地域のイスラム諸国の人口の急増がある。若者の人口が多い一方、失業率が高く、専制体制への不満が爆発した結果と言われている。

以前、本コラム(2010年3月25日)で紹介した、ジョージ・メイソン大学のゴールドストーン教授が「フォーリン・アフェアーズ」(2010年No1)に寄稿した論文「世界を変える四つの人口メガトレンズ」によると、2050年までの今後40年間に起きる世界の人口構成の変化に起因する4つの歴史的変化の1つとして、「世界の人口増の多くは、教育、資本、雇用面でのまともなインフラを欠く、貧しくて若者が多いイスラム諸国で集中的に起こる。」と、同教授は指摘している。

続けて、「世界的にみても、現在年2%以上の急速な人口増大を経験している48ヵ国のうち28ヵ国は、イスラム教徒が多数派の国か、33%を超える大規模なイスラム教徒少数派を国内に抱えている。」

「各国の戦略家は、教育や雇用面でもっとも遅れているイスラム諸国を含む地域に世界の若年層が集中して存在するようになることの意味合いにもっと配慮する必要がある。その結果、生じる貧困、社会的緊張、イデオロギーの過激化が世界各地で大きな混乱を引き起こすかもしれない。」と予想している。

24歳以下の人口の全人口に占める割合は、先進国では29.3%だが、今回反政府デモが起きたエジプトは52.3%、チュニジア42.1%、アルジェリア47.5%、ヨルダン54.3%、スーダン59.0%、イエメンに至っては65.4%に達する(2010年、国連の人口推計)。人口の半分、もしくは半分以上が貧しい若者で占められている国々である。

今回の中東、北アフリカ諸国の政変は、高い失業率に加え、独裁政権下で富が政権関係者などの一部特権階級に集中し、貧富の格差拡大が怒れる若者の強い反発を招いた結果であるが、一過性のものではないだろう。なにしろ、ゴールドストーン教授は、2050年までのメガトレンドの1つとして予想しているのだから。

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