予測者の問題なのか、発注者の問題なのか

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2010年06月03日

  • 原田 泰
今さらではあるが、日本は、空港を作りすぎている。飛行機が飛ばず、赤字を抱えて、困っている空港がたくさんある。その背景として、過大な空港需要を予測したことがある。国土交通省がまとめた国内98空港についての国内線の需要予測と2008年度の利用実績によると、建設時期が古くて当時の需要予測が明らかでない空港や実績がない空港などを除く69空港のうち、実績が予測を上回ったのは8空港にとどまり、約9割の61空港は予測を下回った。69空港のうち、実績が予測の6割以下しかない空港が39空港と6割を占めた(2010年3月10日朝刊各紙)。

本年5月20日から25日にかけて行われた公益法人の事業仕分けでも、過大な需要予測を行った法人が問題になった。確かに、需要予測を誤らなければ、無駄な空港を作らなかったかもしれない。もちろん、需要予測に問題があることは確かだ。しかし、私も民間評価者として議論に参加しておいて今更だが、より大きな問題は、むしろ発注者の側にある。発注者は空港を作りたい。であれば、予測者が発注者の意向を忖度して、過大な需要予測を作るのは当然とも言える。

同じようなことは民間でもありうる。社長がある会社を買収したいと考えているのであれば、相談を受けたコンサルタント会社は、社長の意向を忖度して、買収が利益になるというレポートを書くかもしれない。しかし、それが空港の需要予測ほど極端なものになるとは考えられない。いつも損することを勧めていては、勧められた社長の責任問題になり、そんなコンサルタントを雇ってくれる会社はなくなってしまうからだ。

問題は、空港を作る側が赤字を出しても責任問題にならないことにある。それは空港が私企業として運営されず、地方や国の曖昧な関与の下での無責任体制で運営されているからだ。予測者ではなく、発注者の体制を考え直すことがまず必要だったのではないだろうか。

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