日本はなぜオリンピックでメダルが取れないのか

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2010年03月09日

  • 原田 泰
バンクーバーオリンピックでの韓国の活躍は驚異的だった。人口4800万人の韓国が金メダル6個を含むメダル14個、一方、日本は金なしのメダル5個である。韓国のオリンピック強化予算は597億円、日本は40億円(国立スポーツ科学センター調べ)ということから、オリンピックでメダルを取るために予算の増額が必要だと訴える人が多い。

確かに、多くの予算を使えば、少しは成績が上るだろう。しかし、すでに使っている予算に追加して、さらにオリンピック予算も増大させるというようなことを続けていけば、すべての予算が増大し、日本の財政は破綻してしまう。というか、過去にそういうことを続けてきたから、とんでもない財政赤字になっている訳だ。

オリンピックのメダルが欲しければ、他の予算を削らなければならない。成功の秘密は、何をするかではなくて、何をしないかだ。韓国はアジア人の体格で戦うことの不利な競技には力を入れない。スノーボードは体育会系の韓国根性主義ではできないことも分かっているのだろう。代表の制服をストリート・ファッション風に着こなした国母和宏選手が批判されたが、彼はアメリカで身についてしまったハーフパイプの文化を見せただけだ。日本に合わない文化は、韓国ではなおさら合わないだろう。

冬季オリンピックではないが、やっとサッカーで韓国と互角になった日本は、再び引き離されそうな気がする。しかし、ラグビーでは、1969年以来、日本は対韓国戦で21勝7敗1分けと圧倒的である。昨年は、日本は韓国に80対9で勝っている。日本のラグビーはアジアではダントツの1位だが、世界では絶対にかなわない。

韓国は世界で勝てない競技に予算を使っていない。どんな国でも、予算にも、体格と体力と運動能力に優れた若者の数にも制約がある。オリンピックのメダルを増やすために必要なのは、予算を増やすことではなくて、見込みのないスポーツを止めることだ。しかし、この議論に賛同する人は少ないだろう。行儀と感じの良い、頑張る若者や中年を応援するべきだと多くの人は言うだろう。しかし、選択と集中がなければ、日本は世界では勝てない。

日本が戦後自動車産業で成功したのは、ゼロ戦を恐れたアメリカ占領軍に、航空機産業を禁止されたからだ。ゼロ戦のエンジンを見ると、それが当時の超絶したハイテク技術だと分かる。そのハイテク技術者が自動車を作ったから、日本の自動車は瞬く間に品質を高めることができた。優れた技術者の数には限りがある。自動車と航空機に分散していたら、これほどの成功はできなかっただろう。

戦後の日本経済の選択と集中はアメリカ人がしてくれた。現在の日本経済の選択と集中は日本人がしなければならない。

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