政府の金融・資本市場競争力強化プラン

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2008年01月15日

2007年12月21日、金融庁が「金融・資本市場競争力強化プラン」を公表した。この文書は、(1)金融・資本市場の信頼と活力、(2)金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境、(3)より良い規制環境(ベター・レギュレーション)、(4)市場をめぐる周辺環境を4つの柱として、日本の金融・資本市場の競争力を強化することを目指す提言を行っている。今後、このプランに基づき、金融商品取引法などの法令を改正してプランが実現されることが予想される。

このプランは、多岐にわたり具体的な提言を行っている。たとえば、現在TOPIXなどの株価指数に連動するものに限られているETFを多様化し、商品先物等を含む幅広い投資を可能にすることや、海外不動産を組み入れたJ-REITを可能にすることなどが提言されている。

プランの提言は多岐にわたるため、全てについて触れることはできないので、「(3)より良い規制環境(ベター・レギュレーション)」に関して金融機関にとっての課題について述べる。「(3)より良い規制環境(ベター・レギュレーション)」では、「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組み合わせ」が柱の一つと位置づけられている。これは、詳細なルールを設定し、それを個別事例に適用していくという「ルール・ベースの監督手法」と、いくつかの主要な原則を示して、それに沿った金融機関の自主的な取り組みを促す「プリンシプル・ベースの監督手法」の最適な組み合わせを目指すものである。

この「プリンシプル・ベースの監督手法」はまだ日本ではなじみが薄いが、「プリンシプル・ベースの監督手法」が進んでいるといわれるイギリスでは、たとえば、「業者は顧客の利益を尊重せねばならず、かつ、顧客を公正に扱わなければならない」というプリンシプル(原則)が定められている。こういったプリンシプルの下では、金融機関には、「顧客を公正に扱うとはどういうことか」といことを自ら考え、「法令違反でなくても、望ましくないことはしない」という自己規律が求められる。日本でも「プリンシプル・ベースの監督手法」の導入が進めば、金融機関には、「法令違反という最低限のラインをクリアすればよい」という態度ではなく、何がベストプラクティスかを主体的に考え構築していくことが求められることとなる。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希