サブプライムローンにアメリカの夢を見る

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2007年06月01日

  • 原田 泰
低利長期の住宅ローンを断られてしまうような、所得が低く不安定な人への住宅貸付、サブプライムローンがアメリカで問題になっている。融資審査基準は甘いが金利は高く、住宅バブルの崩壊ととともに担保価値も下がり、家を手放さなくてはならない人もいるという。上院の銀行住宅都市委員長(民主党)が「(ローン利用者の)200万人が家を失うかもしれない」と述べたという(読売新聞07年3月19日)。

住宅バブルの崩壊は、個人の悲劇であるばかりでなく、アメリカ経済全体にも大きな打撃を与えている。住宅投資は2割減で、住宅担保貸付の減少による消費減も考えると、アメリカ経済の成長率を1%ポイント以上減速させる要因だろう。

多くのサブプライムローン業者が破綻しているが、中には、英語もできない移民に金利の高さやリスクをろくに説明もしないで貸し出した不心得者もいたという。

しかし、サブプライムローンで購入したという家をテレビで見ると、日本でなら立派に豪邸として通用するものだ。日本語のできない外国人労働者がいくら一生懸命働いても、日本であんな立派な家を買えるだろうか。日本語のできる日本人も買えないのだから当然無理だろう。

悲劇も多いのだろうが、3年前、5年前に買った人々にはなんの問題もない。米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン前議長は、住宅価格を10%上昇させられれば、この問題は解決すると述べたという(読売前掲紙)。家族全員で必死に働けば、なんとか持ちこたえることのできる人もいるだろう。サブプライムローンは、むしろ、アメリカにはまだ夢があることを示している。

日本では、悲劇になる前に、あんな家を持つ希望もない。日本は、専門的能力を持つ有能な外国人労働者を呼ぼうとしているようだが、まともな住宅も提供できないようではそんな見込みもないのではないか。

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