コラム

2007.03.30
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北京駐在 齋藤尚登 [プロフィール]
中国の外貨準備の有効活用に関する議論
 
中国の外貨準備は1兆ドルを超え、世界最大となった。しかし、その約6割は米国債で運用されているとみられ、持続的な元高と併せ、投資収益率は極めて低いのが現状である(米国債10年物利回りは4.6%程度、人民元は2006年年間で3.2%上昇)。中国政府内部でこの外貨準備の有効活用を巡る議論が活発化している。当局者の公式発言によれば、シンガポールのテマセク・ホールディングス(内外の企業に出資)やシンガポール政府投資会社(=GIC、主に外国の有価証券を売買)の成功体験を参考に、外貨投資管理会社の設立準備が進められており、早ければ年内にも設立される可能性があるという。

具体的な内容については、正式発表を待たなければならないが、現地での取材・報道を元にその概要をまとめると以下の通りとなる。

【1】 対外債務の返済や輸入決済、さらには不測の事態への備えに必要な外貨準備は7000億ドル程度で充分であり、それを超える部分については、投資収益率の向上や中国の経済発展のために、有効活用すべきである、

【2】3000億ドルの「超過」外貨準備から2000億ドル程度を拠出し、外貨投資管理会社を設立する。設立方法は、外貨準備からの直接拠出、もしくは国務院(財政部)が人民元建債券を発行し、相当額の外貨を人民銀行から買い入れる方法による、

【3】 投資対象は、(1)外国企業への出資、(2)海外の有価証券、不動産などが有望視されるほか、一部は資源や大型商品の購入に充てられる可能性がある。

【3】については議論の余地が大きいと思われる。特に、人民元レートを安価に留め置くことで、巨額の貿易収支黒字を計上し、その結果積み上がった外貨準備による海外の資源の購入、あるいは資源会社への出資・買収は、米国を中心とした諸外国との軋轢を招く公算が大きい。中国の識者からは、この外貨資金、あるいは運用益を三農問題や貧困、環境対策に振り向けるべきとの声が上がっている。諸外国との軋轢を回避し、中国経済の質的向上に資するためにも検討に値しよう。

また、海外株式が投資対象に含まれれば、香港のみならず、日本や欧米の株式市場の新たな資金の出し手として登場することになる。ちなみに、中国が参考にするシンガポールのGICは1000億米ドルを超える運用資産のうち、約5割を海外株式で運用しているとされ、中国の外貨投資管理会社はそれを超える本格的な機関投資家になる可能性を秘めている。

最後に、中国が保有する1兆米ドルを超える外貨準備から、中国が本来必要とする外貨準備7000億米ドル、外貨投資会社への2000億米ドル程度の拠出を差し引いた1000億米ドルについては、その一部が中国農業銀行への資本注入に用いられるとの観測がある。これが現実になれば、中国農業銀行の不良債権問題(2006年末の不良債権比率は23.6%)や自己資本比率の問題は大きく改善し、株式上場への機運が高まると予想される。四大国有商業銀行の改革の最後の仕上げとなる農業銀行の健全化を図る上でも、外貨準備の有効活用は極めて重要である。

ご参考
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