孫と祖父の会話 その2

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2007年01月22日

  • 川岡 和也

【今回の内容は、2006.1.17付「孫と祖父の会話」のつづきとなっています】

「おじいちゃん、お正月の旅行、楽しかったよ。おいしいものもいっぱい食べたし、みんなでお泊まりも久し振りだったもん。」

「そうかそうか。それは良かった。いつでも連れてってあげるよ。おじいちゃんが働いていた会社は、退職した人にも旅行とかいろんなものが安く使える仕組みがあるんだよ。」

「へー。でもパパは、会社のを使ってどこも連れてってくれないよ。ねえ、パパが今、働いている会社は、昔、おじいちゃんが働いていたのと同じ会社なんでしょ? どうしてパパはそういうの使ってくれないのかな。」

「(ああ、あいつは途中入社で正社員じゃないからな…)ルミちゃんね、働いてた頃のおじいちゃんと今のパパとは職種っていうのが違ってね。おじいちゃんは正社員だったけど、パパは違ってて旅行が安くなるのとかがついてない職種なんだよ。(※1)

「ショクシュってルミは分からないけど、どうして同じ会社で働いてて安く旅行に行ける人とそうじゃない人がいるの? パパは毎日遅くまで仕事してるのにかわいそうじゃん。ねえ、パパは歳とって今の会社やめた後は、今度はおじいちゃんみたいに会社からネンキンもらえるのかなあ?」

「(今のあいつには退職金制度は適用されないし、この先、正社員に職種転換できたとしても、もう40過ぎで定年までに受給資格を満たせないから会社の企業年金からも一時金の形でしか給付されないはずだな。あんまりこの子に現実を詳しく教えちゃいかんかな。よし、話を軌道修正しよう。)ルミちゃんね、おじいちゃんの年金だってそんなに多くはないよ。うん、いつまでも出るわけじゃないし。15年経ったらおしまいだしね。」

「えっ、そうなの? まえは確かおじいちゃん、会社のネンキンは一生もらえるって言ってなかったっけ?」

「うん、昔はそうだったんだけどね。おじいちゃんが定年になるちょっと前に、会社が年金制度の見直しをしてね、15年で終わりの年金になっちゃったんだ。(※2)

「ふーん、ジローが聞いたら悲しむかも。だって、ずっとずっとおじいちゃんにおもちゃ買ってもらうつもりみたいだよ。小さいおもちゃはパパに買ってもらうけど、大きいおもちゃはおじいちゃんにおねだりするんだって。今度はブラックアルティメットダイボウケンがほしいって言ってたよ。(※3)

「こんどはブラックなんとかだと? 去年はゴールドなんとかだったが、番組が終了したとかで、すぐに遊ばなくなったぞ。」

「そう言えばこのあいだ、おばあちゃんにリコンの話はどうなったのって聞いたら、やっぱりやめたって言ってた。おじいちゃんが会社のネンキンの中から、おこづかいくれるからだって。良かったね。」

「ハッハッハッ、おばあちゃんはお小遣いを貰えるのが嬉しいみたいだな。何に使っているのかは、おじいちゃんには教えてくれないんだけどね。(でも、小遣いを続けられるのも企業年金の給付が終了するまでだな…)」

「ルミ、知ってるよ。おばあちゃんは、おこづかいで将来の自分のネンキンを買ってるんだって。コジンネンキンって言ってたよ。」

「あいつ、そんなことしてるのか…」

「おばあちゃんのは、生きてる限りずっと出るネンキンなんだって。そうだ、おじいちゃんのネンキンが終わりになったら、今度はおばあちゃんのネンキンからおこづかいもらえばいいじゃん。それから、ルミがネンキンもらうようになったら、ルミもおじいちゃんにおこづかいあげるよ。ルミはおこづかいをあげる人がいっぱいいるなあ。パパとママとおじいちゃん…。そうだ、パン屋のおじいさんに頼んどかなきゃ。ルミはいっぱい働くから、会社のネンキンもいっぱいくれるようにって。ね、おじいちゃん!」

(※1)企業によって、一定の条件を満たした退職後のOBが引き続き福利厚生制度の一部を利用できるように設定しているところがある。また、もともと各種の福利厚生制度が利用できる対象者は企業ごとに異なり、いわゆる正社員のみに限定されている場合も少なくない。

(※2)国の厚生年金の一部を代行する機能を持つ「厚生年金基金」は終身年金給付が条件だったが、代行返上を行った後の「確定給付企業年金」では有期年金給付だけでも認められる。終身給付はその分だけ企業会計上の債務負担に影響があるため、制度見直しにあたり、多くの企業が従業員の同意を得て終身年金を廃止している。

(※3)アルティメットダイボウケン …… 幼児向けヒーロー戦隊ものテレビ番組に出てくる合体ロボット。

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