「環境金融」で台頭する新たな投資トレンド

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2006年12月07日

  • 山田 雪乃
05年に発効した「京都議定書」批准国は、08年以降、温室効果ガスの排出量削減に本格的に動き出します。90年と比べて、先進国全体では約5%、日本は約6%の温室効果ガスを削減しなければなりません。地球の平均気温は過去100年間で摂氏0.7度上昇しましたが、地球の温暖化は着実に進み、1990~2100年の間は1.4~5.8度上昇すると予測されています(世界気象機関(WMO)の『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』)。消費者も企業も、それぞれが省エネ、脱CO2の消費・生産行動をとっていく必要性が益々高まっていくでしょう。

では、地球に優しい企業とはどのような企業が思い浮かぶでしょうか。日経BP社の「環境ブランド調査」(06年8月)によれば、環境ブランド指数ランキングの上位3社をトヨタ、ホンダ、松下電器産業が占め、製造関連企業が上位100社をほぼ独占しています。ハイブリットカーや太陽光発電、家電・パソコンのリサイクルなどに関心が集まっているためでしょう。

金融機関はこのランキングに顔を出していませんが、今後、環境保全に向けて、金融機関の果たす役割は重要な位置を占めていくと思われます。グローバル化する環境問題に対して、グローバル化した金融機能の活用が欠かせなくなってきているためです。マネーは収益の極大化を求めて流れますが、近年では、経済的リスクにとどまらず、環境や社会的リスクを加味したリスク・リターンを分析する重要性が増しているのです。

「環境金融(EnvironmentalFinance)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。金融機関が、金利の優遇や審査機能への環境リスクの加味、環境配慮企業を対象にした投資ファンドの運用などによって、環境を配慮する投融資を促進したり、環境的リターンの観点で企業を選別したりして、その機能を発揮していきます。「環境金融」は、CSR(企業の社会的責任)という「企業の課題」の範疇にとどまらず、社会全体に対してコスト削減とリターン向上をもたらし、環境被害の拡大を事前に抑制する機能を内包しています。つまり、金融機関が、環境問題を始め社会に配慮したマネーの流れを作っていくことになるのです。大和証券グループでも、06年2月に環境負荷削減に積極的な企業を応援する「ダイワ・エコ・ファンド」を発売するなど、環境保全を促す金融機能の強化に積極的に取り組んでいます(※1)

環境保全の必要性が高まる中、市場原理を利用して、マネーの出所である投資家や企業の意識を環境配慮型企業へ向かう流れを作っていくことができるのが、金融機関であり、「環境金融」の機能といえます。環境意識の高い企業ほど、株価パフォーマンスが良くなる傾向もみられています(※2)。「環境」を視野に入れた投資こそ、新たな世紀に向けた投資トレンドのひとつになるといえそうです。

(※1)大和証券グループの事業と環境との関わりについては、「サステナ博士の環境講座」第1回 地球の温暖化と大和証券グループの環境負荷に詳細があります。大和証券グループ本社は04年11月、「環境と持続可能な発展に関する金融機関声明」に署名し、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEPFI)に加盟しました。UNEPFIは、環境と持続可能性に配慮した最も望ましい事業のあり方を追求し、これを普及・促進することを目的としています。環境保全も含めたCSRを公開した「持続可能性報告書2005」は、国際比較調査(グローバルレポーターズ2006)において世界34位にランキングし、日本企業では最高の評価を得ています。

(※2)「サステナ博士の環境講座」第5回 大和証券グループの本業と環境とかかわり(2)~SRI編~

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