ワークスタイル多様化時代の人事制度

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2006年09月11日

  • 川岡 和也
労働政策審議会の労働条件分科会が2か月ぶりに再開された(第60回8月31日、第61回9月11日)。労使の主張する各論には隔たりがあるが、より良い雇用ルール作りのための真摯な議論展開が望まれる。

働き方の多様化の時代と言われて久しいが、今では正社員、パートの他に、契約社員、派遣社員からフリーターのバイトまで多種多様である。学校を卒業してすぐに就職し定年まで勤め上げる“生涯一企業の正社員”という働き方は否定こそされずとも、働き方を語るうえでの“ものさし”では無くなっている。おのずと、働き方の多様化時代に相応しい人事処遇や賃金体系の考え方が必要となってくる。結果だけから評価が決まる成果主義のマイナス面への批判が叫ばれているが、人材の流動化が進み、多様なスキルと経験を持つ従業員が混在する中、旧来の正社員用の年功序列をベースとした仕組みに戻るわけにも行かない。また、正社員とパートが全く同じ仕事を行っている場合もあり、職種・契約形態の違いだけで賃金等の処遇に差を設けるのに合理的な説明が出来ないケースも出てきている。

多様な職種や働き方に対する処遇・賃金を定める際には、「同じ“働き”ならば、同じ賃金」を基本的な考え方として構築するのが、合理的で、納得感も高い。すなわち年功や職種で差を設けるのではなく、“働き”を評価するのである。具体的に何を評価するかは、企業の業種、期待される部門・チームの役割、個人の職務内容等によって異なる。売上げ等の営業成績、製品の品質アップ、新商品の開発・研究、バックオフィスでの資料作り、作業の効率化、後輩の育成、将来への布石等々、企業・部門によって多様な職務と評価軸が存在する。旧来のような年功あるいは横並びの昇格制度を前提としない評価方法の確立が重要だ。それは右肩上がりの賃金体系ではなく、その時々の“働き”を合理的に評価した結果の対価・配分となる。

“働き”を合理的に評価する方法が確立できれば、処遇決定の際に年次や年齢という要素を直接考慮することが無くなるため、企業の強制退場システムである“定年”の廃止も可能となる。年齢に関係なく業績に貢献する社員にはそれ相応の処遇とし、引退年齢は社員各人が自律的に計画する風土としてゆく。ワークスタイルの多様化のみならず、ライフスタイルの多様化にも対応した人事システムが求められていくだろう。少子化が進み、65歳雇用延長時代に突入した今、将来の企業の年齢構成が種々の影響を及ぼす前に、新しい時代の人事処遇・賃金体系を模索することが肝要である。

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