CSRからコンプライアンスまで

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2006年04月18日

  • 川田 武文
現 在、どの企業においても管理部門から現場へと、負担の大きい宿題が山積している。CSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)、コーポレートガバナンス(企業統治)、内部統制、リスクマネジメント、コンプライアンス(法令遵守)である。昨今の会社法、証券取引 法、取引所規則等の制度改正、粉飾決算の頻発を背景にした規制強化により「企業を適正に経営していくために、企業自身の判断により、これらを実施する仕組 みを作り、運営し、報告しなさい」という強い要請になっている。これに対し企業の現場では程度の差こそあれ、混乱が生じている。私どもコンサルタントにも 次のような質問が寄せられる。それぞれの関係は? 担当部署は? 大変なコスト(人手、時間、システム投資)がかかるのでは? どこまでやればよいのか?

以上の質問に対して実践的な、そして今後、定着するとみられる取り組みを示したい。結論を先に示すと、それぞれの関係は、企業価値を高め最大化するという 柱を立てて整理すると、図のように整理される。この整理を前提に相互に重複、矛盾を排除し、メリハリをつけて積極的、継続的に取り組むということである。

図の意味を少し説明しよう。まず、(1)CSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)の核となる点は、企業は事業を通じて社会に貢献するのが最大の責務であることである。それは限られた資源を効率的に使用し、顧客にとっ て付加価値の高い製品・サービスを提供し続けることである。それは、財務上は中長期的に資本コストを賄う形で事業を拡大していくこと、すなわち企業価値を 中長期的に向上、最大化していくことである

以上を目的に(2)コーポレートガバナンス(企業統治)が行なわれるが、そのためには(3)内部統制として、業務を適正かつ効率的に遂行するための体制及 びプロセスが構築され、運用されなければならない。
内部統制においては、企業価値を毀損しないために、事業に関連する内外の様々なリスクを適切にコントロールする活動として(4)リスクマネジメントが重視 される。

とりわけ法的リスクの影響は大きく、時として企業の存在そのものにかかわる。したがって国内外の法令、さらに社内規則等の遵守のために(5)コンプライア ンスの体制を築く必要がある。

このようにCSRからコンプライアンスまでの仕組みは、企業価値を高め、最大化することを目的に整備すると重複、矛盾なく整備され、積極的に取り組むべき 戦略策定・実施の仕組みとなるのである。

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