中国進出を加速する世界のインテグレーター

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2006年03月31日

  • 鈴木 紀博
欧米4社に挑む日本郵政公社
急速な経済発展を遂げる中国のエクスプレス(※1)市場で、インテグレーター(※2)と呼ばれる巨大物流事業者による競争が激化している。世界のエクスプレス市場では、ドイツポス ト、米国のフェデックスとUPS、オランダのTNTの4社が席巻しており、近年は中国が戦いの場となっている。中国には、各社とも合弁会社や代理店などの 形態で1980年代に進出しているが、最近の急展開の背景として2つの要因が挙げられる。

第一に、中国は01年12月のWTO加盟時の公約に従い、05年12月に物流業を外資に開放した。それまでも外資による国際エクスプレス事業は認められて いたが、新たに国内のエクスプレス事業も可能となり、100%外資企業の設立も認められた。第二に、04年7月に締結された米中航空協定で、米中間の直行 便の数を週54便から、10年までの6年間で週249便に増加させることが決定した。増加枠195便のうち貨物便は111便を占める。また、同協定によっ て相手国内でのハブ(※3)開設も認められた。

ドイツポストは“DHL”ブランドでエクスプレス事業を世界で展開している。04年5月に外国企業として初めて中国国内のエクスプレス事業に進出すること を決定し、同年8月には香港国際空港にハブを開設した。

フェデックスは天津の合弁会社を完全子会社化し、中国国内のエクスプレス事業の営業権取得を本年1月に決定した。08年には現在フィリピンにあるアジア太 平洋地域のハブを広州の白雲国際空港に移転する計画である。

UPSは04年12月に、中国の物流大手シノトランス(中国外運)から国内23都市における国際エクスプレス業務の営業権を取得している。また07年に は、上海の浦東国際空港にハブを開設する予定である。

TNTは中国のエクスプレス大手、華宇物流集団の買収を検討中である。

日本では日本郵政公社が対応を急いでいる。郵政民営化法によって本年4月に国際貨物運送事業への出資が可能となるのを機に、全日本空輸(東:9202)と の共同出資によって貨物専用機運航会社を設立し、国際エクスプレスサービスを展開する。新会社には日本通運(東:9062)と商船三井(東:9104)も 出資することが決まっている。また、郵政公社はTNTと国際物流分野における幅広い業務提携を行うことで合意している。

電子メールの普及により通常郵便の収入が減少を続ける郵政公社にとって国際物流への進出は重要課題である。しかし、そこには欧米インテグレーターとの競争 という大きな試練が待ち受けている。

(※1)エクスプレス:書類、小包、小口貨物などの急送便サービス
(※2)インテグレーター:自ら航空機を保有し、陸上輸送と航空輸送を統合(インテグレート)してドア・ツー・ドアの配送サービスを国際規模で展開する物 流事業者。
(※3) ハブ:放射状に広がる航空路線網の中心。空港を自転車の車輪の中心部(ハブ)に、航空路線を“や”(スポーク)に見立て、ハブ・アンド・スポークと呼ばれ る。

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