ペストフの三角形

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2006年02月17日

  • 小倉 正美
「小 さな政府」路線が押し進められるなか、一方で民間過信・市場偏重との批判が存在する。政府か民間か、国家か市場か、ことの本質はひとえに、自由と平等の矛 盾にある。「自由」ばかりを追求すると、格差が広がり、強者だけが生き残る不平等な社会となる。逆に「平等」を強調すると、自由が奪われ、努力がむくわれ ない・活力なき社会となる。これに対し、かかる矛盾の克服のためには「友愛」が必要と唱えたのは、フランスの国旗(トリコロール)が語るところ、市民革命 の達観であった。

「ペストフの三角形」とは、この近代社会の“3点セット”=自由・平等・友愛を頂点とする「三角形」のことである(下図)。そもそもNPO/NGOの意義 を理解するための組織分類法として、スウェーデンの政治経済学者ペストフが提唱したことからこの名がある。人がつくる組織を、3つの軸((1)公的・私 的、(2)営利・非営利、(3)公式・非公式)で分類すると、公的・非営利・公式な「政府」、私的・営利・公式な「私企業」、私的・非営利・非公式な「共 同体」(血縁・地縁・文化)となる。NPO/NGOは、これらの3つの組織が交わる三角形の中心にあって、政府・企業・共同体に学び、それぞれの欠点を補 う第4の組織であることが理解できる。

巷の議論は往々にして、企業・政府といった「公式な部分」に偏りがちで、共同体や個人の存在は希薄だ。しかし、課題の克服(自由・平等・友愛の鼎立)には やはり、「非公式な部分」(家族や地域)の再生、そして「個人」の自立/自律が不可欠である。NPO/NGOの台頭はその現れにほかならない。ペストフの 三角形 — シンプルな図形ながら、そこには多くの示唆に富んだメッセージがこめられている。

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