中国の高齢化と介護ロボット

2018年1月19日

2016年の中国の高齢化率は10.8%だが、65歳以上の高齢者人口は1億5,000万人超と、日本の総人口を上回る規模である(※1)。2025年には2億人を超え、2035年には3億人に迫るなど(※2)、今後も増加が見込まれる。

そうした中国では、家族による老親扶養といった私的介護が一般的だったが、30年以上も続いた一人っ子政策により、高齢者の単身世帯や夫婦のみ世帯が増え、伝統的な家族扶養文化が崩れつつある。そのため、高齢者介護の社会化が求められている。

介護施設の整備が急ピッチで進められる一方で、中国は介護職員の人件費高騰や人材不足という新たな問題にも直面している。経済成長に伴い、賃金が上昇しているためだ。そこで介護サービスの効率化を図る介護ロボットやAIの活用が注目されている。

ロボットやAIの活用が期待される背景には、中国の産業政策が変化していることも大きい。2015年に中国は、これまでの労働集約型の製造体制から脱却して製造強国へと大きく舵を切る方針を「中国製造2025」で示した。その一環として翌年には、ロボット産業の育成と普及に積極的に取り組む「ロボット産業発展計画(2016~2020)」を発表。さらに2017年には、AI基幹産業とその関連産業の市場規模を2030年にはそれぞれ1兆元(約17兆円)、10兆元(約170兆円)とする野心的な目標についても公表している。このように中国は、ロボットやAI産業を重点発展分野の一つに据え、世界をリードする製造強国への転換を本格化させようとしている。今後、介護分野でもロボットやAIの導入が進む可能性があろう。

公的介護保険制度が整備されていない中国では、専門的な介護サービスは高額なため、利用は一部の富裕層に限定されていた。しかし2020年までの全国での導入を目指し、現在、上海など15の都市で介護保険制度の試験導入が行われている。ロボットやAIを活用したサービスが公的保険の適用対象となれば利用者は増え、先進的な介護が一気に普及する可能性もある。

ロボット介護機器の開発に戦略的に取り組んできた日本にとっても、中国の巨大なマーケットは魅力的に映る。技術面では優位と評される日本のロボットだが、国内の介護現場での活用がそれほど進んでいないからである(※3)。すでに中国企業と提携を結んで中国マーケットに進出する日本企業も現れているようだ。中国マーケットで実績を積み、日本に逆輸入されるパターンも増えるかもしれない。

(※1)中国統計年鑑2017
(※2)United Nations[2017], World Population Prospects: The 2017 Revision
(※3)石橋未来[2017] 「介護ロボット開発に求められる視点-施設介護型から在宅介護型へ」大和総研 経済構造分析レポート No.65(2017年12月18日)を参照。

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