新春を迎えて

2018年1月1日

  • 大和総研理事長 武藤 敏郎

我が国経済は、ここ数年緩やかな成長軌道にある。順調な海外経済に支えられて輸出は好調である。最近の失業率は3%を下回っている。2017年11月には日経平均株価が22,666円を記録し、25年10か月ぶりにバブル崩壊後の戻り高値を更新した。しかし一方で、賃金は伸び悩み、消費も弱含みである。コアCPI(生鮮食品を除く消費者物価)は1%を下回ったまま推移している。それでも2017年の実質経済成長率は、1%台後半を達成すると見込んでいる。

2018年は、2017年のこのような言わば「ぬるま湯経済」から脱却することができるのであろうか。当面の日本経済の課題は、労働市場が逼迫し人手不足が恒常化している中、労働生産性をいかに上げていくかである。労働生産性を上げるためには、企業が省力化投資や労働環境の改善を進めるとともに、政府が働き方改革やイノベーションを起こすビジネス環境の整備を行うことなどが必要である。
我が国経済は、2012年12月以来回復過程にあり、57か月間の景気回復を記録した「いざなぎ景気」を抜いて戦後2番目の景気回復期間となっている。2000年代初頭の戦後最長の「いざなみ景気」は73か月間続いた。今回の回復が2019年1月まで続けばいざなみ景気を超え、戦後最長の景気回復となる。日本経済の潜在成長率は、現在0.8%程度と見込まれている。これを前提とすれば、1%台半ばの成長を続けることは難しいかもしれない。

今後の日本経済にとって、リスク要因は何だろうか。
第一は、Fed が始めた米国の金融緩和政策からの出口戦略が、日本経済や新興国経済に与える影響である。第二は、中国経済の下振れである。中国では企業部門の債務残高が増加しており、金融危機を招くリスクが懸念されている。第三は、トランプ大統領の政策である。トランプ大統領は多国間協力に消極的な態度をとっており、国際社会におけるアメリカのリーダーシップは期待できない状況にある。第四は、北朝鮮の動向である。北朝鮮が現在の核開発やミサイル開発を続けた場合、米国や中国がどのような対応をするのか、いずれも日本の経済社会に大きな影響を及ばす可能性がある。第五は、我が国の財政金融政策の持続可能性が懸念されていることである。2019年10月に予定されている消費税率の引き上げは、この観点から重要な意味を持っていると考えられる。

我が国経済にとって、国内に差し迫ったリスクは見当たらないが、グローバルガバナンスの不在が最大のリスクであろう。

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