医師任せでなく患者自ら選択する「医療の質」

2017年6月19日

2013年より、外来の機能分化・連携を目的として「かかりつけ医」の普及が図られている。診療所の医師は、患者の身体状態に応じて、病院の専門医療による治療が必要と判断した場合には、紹介状(診療情報提供書)を発行し、紹介した地域の病院への受診を勧めることになる。医師は、医師・病院・学会・学閥等のネットワークを介して、地域の医療事情をよく知る立場にあるため、一般的には、「医師による紹介」は信頼が高く、患者に適切な紹介が可能になると考えられている。診療所から病院への患者紹介・病院から診療所への患者紹介を通じた医療連携は、診療報酬において加点評価されるため、双方で推進されている。実際に、厚生労働省の「平成26年受療行動調査」を見ると、患者が外来・入院時の病院を選んだ理由(複数回答)で最も多いのは、「医師による紹介」(外来36.2%、入院53.7%)となっている。

しかし、2011年の同調査により、病院を選んだ理由(外来20項目、入院19項目)別の患者の満足度について見ると、「医師による紹介」で病院を選んだ患者のうち、紹介先での診療・治療内容に満足した割合は、外来で約5割、入院で約7割にとどまっている(図表)。複数回答ながら、他の理由で病院を選んだ場合の方が、総じて患者の満足度が高い。「医師による紹介」が患者の満足をそれほど満たせていない理由の1つとしては、実際には、医師は、地域内で連携している病院を事務的に紹介しているケースも多く、各診療分野で評価の高い「技術のすぐれた医師」を紹介しているわけでは必ずしもないことが挙げられる。

図表に示したように、「以前に来たことがある」「自宅や職場・学校に近い」「交通機関の便がよい」「特に理由はない」など、利便性を重視し、医療の質はこだわらずに病院を選択した場合にも、外来・入院ともに、満足のいく医療は得られにくいという結果となっている。地域には多くの病院が存在し、患者は誰でも受診できるが、病院が提供する「医療の質」は決して均一ではない。

ポイントは、患者が医療で満足を得られやすいのは、「技術のすぐれた医師がいる」「専門性が高い医療を提供している」「生存率、合併症発生率などの治療成績が良い」という理由で病院を選んだ場合、ということである。医療の質は、「構造(モノ・ヒト)」「過程(医療従事者の態度や行動)」「結果(治療や看護の結果)」という3つの側面で評価されるが、最終的には、医師個人の診療スキルに着目した病院選びが重要ということだろう。

毎年、様々な出版社が医師間での技術的な評判調査や手術数・患者数を基にして出版する、全国の名医ランキング本は、出版の度にベストセラーになるという。医師のスキルに関する情報は、インターネットや書籍・口コミ等を通じて、患者でも容易に取得できる時代になった。がんや心臓病等の重篤な病気の患者・患者家族ほど、質の高い医療を求めて、医師や病院に関する情報を多く入手しようと思い、積極的に行動することが多いだろう。

その一方で、「医療の質」に対し関心が低い患者・患者家族がいることも事実である。様々な「医療の質」の中から、どの質を選択するかの判断は、患者・患者家族に任されており、患者が享受する「医療の質」には格差がある。「医療の質」を見極め、自ら選択する覚悟を持つ患者だけが、質の高い医療を享受できるといえるだろう。あなたやあなたの家族が病気にかかった時、「医師による紹介」を信頼し従いますか、それとも自らでも紹介先の「医療の質」を見極めた上で選択しますか。

医療に対する満足度の高い順に見た病院を選んだ理由(複数回答)

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