先進国の生産性低下の救世主?

2016年10月11日

先日、都心に車で出かける際、日中6時間も駐車することになった。近隣に駐車場が見つかるかどうかも気になるが、何より都心で駐車すると駐車料金が高くなる。世間では余計なモノを持たずシンプルな生活を目指す「断捨離」が流行だが、残念ながら我が家は荷物が一向に減らない。出かける時も荷物は多くなりがちなので車を使いたいが、家計節約のため車で行くのを諦めようかと思っていた。

私は駐車場を探すとき、スマートフォンの駐車場検索アプリを使用している。今回検索すると、たまたま都心で6時間駐車しても1,400円という格安な駐車場を発見した。周辺の駐車場に停めれば、同じ条件で3,000円~4,000円はかかってしまう。しかも駐車場は予約が可能である。私が抱いていた2つの懸念は解消されて、その日は安心して都心へ車で出かけることができた。

私は7年前に弊社コラムにてシェアリングエコノミーについて書いたことがあり(※1)、その時点では日本でカーシェアリングやクラウドサービスが普及し始めた程度であった。しかしその後、利用していない部屋を旅行者に貸す「民泊」や、自家用車に乗客を乗せる「ライドシェア」などが、限られた地域ではあるが実施や実証実験の段階に入っている。世界的にもシェアリングエコノミーは急速に普及しつつある。

今回私が利用した駐車場は、マンションや民家が所有する駐車スペースのうち未活用の部分を時間貸しするサービスである。通常のコインパーキングとは異なり、駐車を確認するためのロック板(駐車板)もないし、料金支払い機もそこには存在しない。ネットで事前に自分の車種やナンバーを登録しておき、支払いはクレジットカードで行う。当日はアプリで写真が掲載された指定の場所に停め、利用後はアプリのチェックアウトボタンを押せば、全ての手続きは完了する。

こうした新しい駐車場サービスは、現地の初期投資がいらないこともあり、利用料金が大変安くなっている。もちろんこうしたサービスはまだ普及段階であり、利用できる駐車場の数も限られている。しかし、このような従来では考えられなかったサービスが実現可能になったのは、ネット上で取引相手の評判などの履歴情報の共有や決済などが容易にできる環境が整備されることで、サービスの質が保たれるようになったからである。

製造業と比べると、サービス業の生産性は低いとよく言われる。その理由として大きいのは、サービス業は基本的に在庫を保有して需要変動に対応するということができないため、需要低迷時に料金を引き下げるなどの従来のやり方だけだと、十分にはストックを活用できていないことがある。ICTを使って価格や取引相手などの情報を人々の間で共有し、決済手段を確保することができれば、余剰ストックを効率よく使うことで、サービス業の生産性を高める余地も生まれてくるだろう。

先進国ではサービス業のウェイトが高くなり、それが現在の生産性の低下にも影響しているものと思われる。様々なストックを効率よく活用できるシェアリングエコノミーが一層拡大すれば、サービス業の生産性上昇を通じて、先進国を悩ます生産性低下を救う契機となるかもしれない。

(※1)溝端幹雄[2009]「なぜ人々は所有するのをやめるのか」、大和総研コラム2009年11月5日

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