"女性の活躍"のカギを握る男性たち

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2016年01月06日

  • 物江 陽子

「女性の活躍推進」が、政府の重点施策となって久しい。働く女性のひとりとして、大いに応援したい動きである。しかし、なぜか筆者は「女性の活躍」という言葉を聞くたびに微妙な違和感があった。この違和感は何なのだろう。データを確認しながら考えてみた。

わが国の労働力人口に占める女性比率は2014年に43%だが、女性雇用者の内訳を見ると、その57%がパート・アルバイトや契約社員などの非正規職員で、正規職員の割合は43%にすぎない。男性雇用者の79%が正規職員であるのとは対照的である。正規職員に占める女性比率は31%にとどまる(※1)

同じ年の管理職女性比率を見ると、11.3%であった(※2)。「2020年に指導的地位に占める女性の割合30%」を達成するという、いわゆる「2020年30%」目標には程遠い状況にある。この数字は、米国(43.4%)やドイツ(28.8%)、英国(33.8%)など他の先進国と比べると、かなり低い(※3)。そもそも「2020年30%」目標は2003年に定められたものだが、当時の管理職女性比率は9.7%であった。つまり、状況はこの11年間でほとんど変わっていないのである。

なお、管理職女性比率「11.3%」という数字は、民間企業のみではなく、自治体や学校など非営利機関を含む数字である。民間企業(従業員100人以上)における課長級の女性比率は9.2%にとどまる(※4)。また、上場企業の状況について、東洋経済新報社の「CSRデータベース」から確認すると、管理職女性比率はデータが得られた企業の平均で2013年度に5.3%とさらに低い(※5)

背景には、共働き世帯においても、家事や育児の多くを女性が担っている現状がある。総務省の調査によれば、共働き世帯における妻の家事時間は一日あたり平均3時間半、一方、夫の家事時間は平均23分である(※6)。六歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児時間は一日あたり平均1時間7分。米国(2時間58分)や英国(2時間46分)、ドイツ(3時間)と比べるとかなり短い(※7)

そんなことを考えているとき、第4次男女共同参画基本計画が発表され(※8)、冒頭にあげた違和感の理由がわかった気がした。同計画では、「女性の活躍推進のためにも男性の働き方・暮らし方の見直しが欠かせない」として、「男性中心型労働慣行の変革」が掲げられたのである。「女性の活躍推進」と言うと、あたかも活躍できない女性の問題であるかのようにも受けとれてしまうが、実際には女性が仕事で十分活躍できていないのは、仕事で活躍する夫に代わって、家事や育児を一手に担っているため、というケースも多いのだ。男性が「女性の活躍推進」について語るのを目にするとき、ついつい筆者は、「それは結構なことだけど、一体この方は週に何回、夕飯づくりをしているのかなあ・・」などと考えてしまう。今年こそは、女性が仕事で活躍できる社会づくりの第一歩として、家庭における男性の活躍が進むことを期待したい。

(※1)総務省(2014)「労働力調査」。雇用者の内訳は、役員を除く雇用者の内訳。
(※2)総務省(2014)「労働力調査」。正確には「管理的職業従事者」で、「事業経営方針の決定・経営方針に基づく執行計画の樹立・作業の監督・統制など、経営体の全般又は課(課相当を含む)以上の内部組織の経営・管理に従事するもの」を指す。
(※3)2013年の数値。労働政策研究・研修機構(2015)『データブック国際労働比較2015』
(※4)厚生労働省(2014)「賃金構造基本統計調査」
(※5)東洋経済新報社(2014)「CSRデータベース 2015年版」
(※6)総務省統計局(2012)「平成23年社会生活基本調査結果」
(※7)内閣府(2015)『平成27年版 男女共同参画白書』
(※8)2015年12月25日閣議決定

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