「証券投資の日」に考える長期分散投資

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2015年10月05日

  • 濱田 真也

昨日10月4日は、証券業界では「証券投資の日」であり、この日を中心に、しばらく全国各地で記念イベントが行われる模様である。この投資の日は「とう(10)し(4)」(投資)の語呂合せであり、証券業界団体が参加する「証券知識普及プロジェクト」という共同事業によって定められた(※1)。制定が1996年ということで、来年がちょうど20周年となる。

また、同プロジェクトは、投資の日生まれの「とうしくん」という、牛の形をしたマスコットキャラクターも設定しており、これが関連イベント会場に赴いたり、2013年から「ゆるキャラグランプリ」にエントリーしたりと、証券取引になじみのない層に対してのアピールにも一役買っているようである。そして、とうしくんのキャラクター設定を読んでみると、「長期分散投資」による資産形成を意識したものになっている。

長期分散投資は、複数の資産を組み合わせることで、リスクを抑えながら長期間投資を行うというものである。証券投資の枠内では、その一つの有用な商品として投資信託がある。また、より機動的に売買できるETF(上場投資信託)も証券取引所において上場している。1995年では1銘柄のみであったETFは、20年経った今では219銘柄(※2)が上場している。また、単に銘柄数が増えただけでなく、その種類も大きく拡充されている。例えば、日経平均株価やTOPIXなど主要な国内株価指数だけでなく、規模、セクター別の指数や、REIT指数、外国株式指数、コモディティ価格を対象としたものなどもある。また、ここ数年では、株価指数などのリターンに一定の倍率をかけたリターンが得られるレバレッジ型、インバース型と呼ばれるものがよく取引されているようである。十分な流動性があるとは言えない銘柄も一部にはあるが、国内株式市場においても長期分散投資を行う環境は、ここ20年でかなり整ってきたと言える。

全国証券取引所による「ETF受益者情報調査」によれば、個人(およびその他)の総受益者数は、初回の2012年7月調査で約35.9万人であったものが、直近の今年の1月調査で約47.2万人とこの2年半で約30%増加した。これは「延べ人数」であり、同一受益者が異なる銘柄で重複してカウントされている。このため、この数字だけで個人のすそ野が拡大したとは言えないうえ、実際に長期分散投資を目的としたものかは把握できない。ただ、この数字から、個人によるETFへの投資が拡大していると言うことはできるだろう。

さて、牛のキャラクターであるとうしくんには、強気相場(雄牛=ブル相場)の意味も込められているとも言われている。今年の後半あたりから株式市場も不安定な状況が続いており、今後の見通しにおいても強気になれる感じではなさそうであるが、とうしくんの成長に託されたように、今後、長期分散投資による資産形成が根付いていくのかが注目される。

(※1)日本証券業協会HP
(※2)2015年9月末時点における東京証券取引所に上場している銘柄数(ETN(上場投資証券)含む)

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