アフリカの人口爆発

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2015年09月03日

  • 木村 浩一

我が国では、少子高齢化、人口減少が重要な政策課題となっているが、目を海外に転じると別の世界が見えてくる。国連が2015年7月に発表した世界人口予測“World Population Prospects The 2015 Revision”によると、世界の人口は、2015年の73.4億人が2050年には23.8億人増の97.2億人に、2100年には38.6億人増の112.1億人になる、と予測している。

世界の人口は22世紀にかけて増え続けていくが、その増加の大半がアフリカの人口増によるものである。アフリカの人口は、2015年の11.8億人が2050年には2.1倍の24.7億人、2100年には実に3.7倍の43.8億人に増加する。今後85年間の世界の人口の増加(38.6億人)の8割がアフリカの人口増による。ちなみに、2100年時点で2億人を超える人口のアフリカの国は7ヵ国に達する(ナイジェリア7.5億人、コンゴ民主共和国3.8億人、タンザニア2.9億人、エチオピア2.4億人、ニジェール2.0億人、ウガンダ2.0億人、エジプト2.0億人)。

しかも、アフリカの人口の内訳を見ると働き手の増加が顕著で、15~64歳の生産年齢人口は、2015年の6.5億人が2050年には15.3億人に増加し、2100年には28.0億人に更に増えていく。

豊富な労働力を持つ中国の世界経済への登場は、グローバル経済に大きなインパクトを与えた。1990年における世界の生産年齢人口は32.4億人だったが、その時の中国の生産年齢人口は7.5億人。アフリカの生産年齢人口の急増は、中国のグローバル・エコノミーへの参加と同等の大きな衝撃を世界経済にもたらすだろう。

豊富で低コストの労働力の恒常的な増加は、先進国にとっては慢性的なデフレ圧力と失業率、特に若年世代の失業率の高止まりをもたらすだろう。そして、アフリカ諸国で労働者増加に見合うよう雇用が増えていかなければ、爆発的な人口増加は移民圧力を高め、特にアフリカに近いヨーロッパへ移民が多く押し寄せ、政治的な摩擦要因となる。国連は、2000~2015年に発展途上国から先進国へ年平均410万人の移民があったが、2015~2050年の間には9,100万人の移民が起こる、と予測している。

2010年から2012年にかけて起きた「アラブの春」は、アラブ諸国の貧しい若者の人口増加、高い失業率を背景に起きたが、人口が急増していくアフリカ諸国でも同じような社会的緊張、混乱が起きる可能性が高い。経済の低迷により先進諸国は移民排斥など内向的になっているが、先進国の指導者はアフリカへの援助拡大など世界的な人口動態の変化への対応を怠ってはならないだろう。

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