男性の働き方改革への期待

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2015年09月02日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 元秋 京子

先日、クライアントからの女性の退職金の問合せがあり、これに関連して女性の勤続年数について考える機会があった。これまで、定年退職を迎えた男性社員が、花束を受け取って挨拶をしているシーンを何度か見てきたが、そういえば女性が定年で花束を受けるシーンはほぼ見たことがない。目下、政府および各社が積極的に女性の活躍に対する取組・施策により、将来的には女性の勤続年数が長期化することが見込まれるが、足元の数値から改めて現状の課題を確認してみることとする。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における雇用者の平均勤続年数(平均年齢)については、男性が平成4年;12.5年(39.7歳)、平成16年;13.4年(41.3歳)、平成26年;13.5年(42.9歳)に対し、女性は平成4年;7.4年(36.0歳)、平成16年;9.0年(38.3歳)、平成26年;9.3年(40.6歳)となっている。依然として、女性は男性に比して低い数値ではあるが、伸び率は女性の方が大きくなっており、勤続期間の長期化傾向が見受けられる。一方で、短時間労働者を見ると、平成26年の平均勤続年数(平均年齢)は、男性が5.1年(43.4歳)に対し、女性が5.8年(45.6歳)と前述の雇用者との逆転現象が起きていることがわかる。これをさらに、総務省統計局「労働力調査」により詳しくみてみたい。

年齢階級別の社員数

上表を見ると、女性は25歳以降、男性と比して正社員数が半数である上、代わりに非正規社員数が大幅に増加するため、特に35~44歳・45~54歳女性の非正規割合の格差が顕著となっている。非正規社員への就業理由のトップは、両年齢階級ともに「家計の補助・学費等を得たいから」とあり、次いで「家事・育児・介護等と両立しやすいから(35~44歳)」「自分の都合のよい時間に働きたい(45~54歳)」とあった。結婚・出産・育児等を機に退職した後、制約された時間の中で就業する手段として非正規社員を選択していることがうかがえる。正規社員の枠組みの中においては就業がまだまだ困難であるため、自身の能力・キャリアが発揮する機会を失っている可能性は否定できない。

男性と比較すると、女性は結婚・出産・育児・介護等により一時的にキャリアが中断する上、各人によりその時期も大きく異なるため、会社として画一的なモデルや働き方を当てはめることは難しく、これらの取組を女性の努力だけで行うことには限界があり、期待される効果を得るところまでは至っていないというのが現状ではないだろうか。

折しも、内閣府男女共同参画局から「第4次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(素案)」が2015年7月28日に公表された。冒頭では「男性中心型労働慣行等の変革と女性の活躍」とあり、男性が置かれている労働環境等の見直しの必要性とともに、主には長時間労働の削減、家事・育児・介護等に男性参画可能となるための環境整備等がうたわれている。

素案は本年9月初旬に地方公聴会やパブリックコメントを実施し、広く意見を取り入れた上で、男女共同参画会議から審議・答申を行う予定である。従前の労働慣行の見直しや男性および社会の意識変革を短期的に実行できるものではないが、性別に関わらず活躍できる環境に向けて、まずは各人が意識を持って少しずつ行動を変えていくことが重要である。

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主席コンサルタント 元秋 京子