見知らぬ相手から子ども服を買える理由

2014年3月26日

ようやく暖かくなってきた。衣替えの季節である。我が家では服の数は筆者が一番少なく、最も多いのは子どもである。その理由の一つには、子どもは成長が速いため、子ども服の着られる時間は必然的に短くなりやすく、結果的に子ども服が増えやすいということがある。でも、まだ着られる服を捨てるのはもったいないので、例えば、知り合いの子どもにあげたり、幼稚園のバザーや古着店に出したりして再び活用してもらうことがある。また、サイクルの短い子ども服は、新品を購入するのももちろん魅力的だが、古着でも構わないという場合もあり、そうした古着をやり取りする方法の一つに、ネットオークションがある。

妻は過去何度もネットオークションで子ども服を購入しているが、これまでのやり取りや商品の受け取り、商品の質等に対して特段、不満はないようである。買い手の妻は気に入った子ども服を入手できるし、売り手も着られなくなった子ども服を売り出すことで服を無駄にしなくて済む点で、双方にとって望ましいシステムである。

しかしよく考えてみると、ネットでこうした取引が成立することは不思議なことである。こちらから現金を差し出す代わりに、全く見ず知らずの相手とほとんど内容を確認できない商品(※1)の購入を約束するという契約を結ぶからである。出品者は知らない相手に商品を差し出しても代金を受け取れる保証はないし、落札者も代金を支払っても商品を受け取れないリスクや偽物をつかまされるリスクもある。だが実際は、ネットオークションは盛んに行われており、本来ならば成立し得ないはずの取引を様々な工夫によって解決している。

例えば、商品の出品者を落札者が評価する一方で、商品を購入する落札者も出品者から評価される仕組みがあり、それらの評価情報をすべての人々が閲覧できるようになっている。過去に配送が遅れたり商品の質を正確に申告したりしない出品者や入金が遅れた落札者は、評価を通じて履歴が残るので、評判の悪い人々はその後のオークションでの取引が成立しにくくなる。このように相手をだまして一時的に利益を得ても、その後はネットオークションに参加できないという大きな損失が発生する仕組みがあるので、ネットオークションの参加者は最初から真面目に取引する誘因を持つようになるのである。そのほかにも、入金の有無を第三者であるネット管理者が仲介する仕組みなど、取引の信頼性を高める工夫がなされている。

市場が成立しにくい場面や協力関係を引き出すことが必要な場面では、上のような仕組みを取り入れる工夫は過去にも世界各国で見られる。不正な取引を排除し、契約の実効性を担保するには、単なる規制による強制力だけでなく、市場の力もうまく活用していくことが有効と考える。規制改革の議論でも、こうした視点が必要なのではないか。

(※1)ネットに掲載される写真を通じた形で、内容は確認できる。

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