「ブラック企業」のレッテルをはがす一つの考え方

2014年3月4日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 増田 幹郎

「ブラック企業」という言葉が認知されるようになって久しくなった。昨年は厚生労働省が初の実態調査を実施して公表したのをはじめ、この時期にはここ数年、我が子をブラック企業に就職させないための親御さん向けセミナー等も数多く開催されていると聞く。

このブラック企業については、様々な立場から様々に定義されているようであるが、共通するキーワードとして、労働基準関係法令違反、長時間労働、離職率が高い、パワハラがある、といったものが挙げられよう。法令違反は論外であるが、長時間労働と離職率の問題に関しては頭を抱えている企業も多いのではないだろうか。確信犯的に人を使い捨てのように働かせている企業でなくても、多かれ少なかれこの2つには該当している場合も現実にはある。慢性的な人材不足で長時間労働を余儀なくされ、その結果として体調不良等を引き起こして離職する人が多いという業界や職種の存在も指摘されている。また、もう一つのキーワードであるパワハラ問題は、ブラック企業が大きく取り上げられる以前より、パワハラを起因とするうつ病などメンタルヘルスの不調による休職者の増加という面でも注目されてきた。

長時間労働による不調とメンタルヘルスの不調を訴える労働者の増加に伴い、ブラック企業は心身共に病むまで働かされる企業の代名詞にもなっている。もし、そのレッテルを貼られてしまうと、冒頭で触れたように特に新卒をはじめとする人材の採用面で大きな影響を受ける。ブラック企業として応募者に敬遠されるようになると、十分な人材を採用・確保することが難しくなり、さらに在職者の長時間労働や一人ひとりに掛かる負担が増え、心身の調子を崩して離職する者が増えるという悪循環に陥る危険性が考えられる。思うように人材を確保できなければ、将来的には企業の持続的成長性にも影響する懸念も出てくるだろう。

もしブラック企業のレッテルを貼られてしまったら、正解はないがまずは地道に企業としての“王道”を歩むことが考えられるのではないか。労働者の健康問題という面もあるものの、企業として今の時代から将来に向けて人材をどう管理していくかとの観点から、従来からある人事制度を見直してみる。例えば長時間労働とパワハラでは所属長に問題がある場合が多く、管理職への登用にあたっての評価基準や研修制度などに“部下の健康維持・管理”というこれまでとは違う内容を加えたり、比重を高くしたりするなどがあり、これらはすでに対応している企業もある。さらに人事制度にとどまらず組織の改変等も行って、従業員の健康を推進する経営の実行を謳う企業も現れており、今後はその考え方の基となるビジョンや戦略を新たに打ち出す企業も出てくる可能性もあろう。

一度貼られたレッテルを急にはがすことは難しい。少子高齢化で労働力人口が減少していくなか、優秀な人材を採用・確保するための信用回復には時間がそれほど残ってはいないと思われる。大きな課題が何であり何処にあるのか、それによる影響(損失等)はどの程度かをまず把握し、それら材料から目標を設定、対策の優先順位付けを行って、効果的に手を打っていくことが肝要となるだろう。

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