早死にする職業ランキング上位?の若手官僚の労働状況

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2014年02月19日

  • 菅谷 幸一

最近、メディアなどで「ブラック企業」がよく取り上げられているように感じる。ブラック企業とされる企業にはいくつかの特徴があると思うが、特に問題視されるものの一つとして、長時間の時間外労働(残業)を強いる過重労働が挙げられるであろう。最悪の場合、過度な労働負担により死亡(過労死)に至るケースもあり、海外でも“karoshi”とそのまま英語になるほど古くから知られている。

厚生労働省によると、一か月あたり100時間または2~6か月平均80時間の残業が過労死に認定される一つの基準とされているようである(※1)。過労による自殺や、死亡に至らないまでもうつ病など精神疾患を患うケースも多いと思われ、表面化していない心身への影響を考慮しても、深刻な問題であると言える。昔から日本人の美徳として「勤勉」が挙げられてきたと思うが、負の側面として、このような国民性も手伝ってか、過労は日本独特とも言えるような社会問題となったのかもしれない。

ブラック企業という文脈での話になると語弊が生じかねないが、長時間労働が当たり前となっている職種の一つとして、国家公務員が挙げられると思う。特に、(職種、部署、時期にもよるが、)中央省庁の若手職員の労働負担は重い。一例ながら、筆者が官庁に出向していた際も、主観的かもしれないが、労働状況は厳しいと感じた。筆者がいた局は他局に比べてまだ良いという話ではあったが、それでも、月100時間を超える残業がよくある若手職員は少なくなく、中には200時間を超える職員もいた。ちなみに、多忙な部署の若手の残業時間は、ピーク時には月300時間を超えるとも聞いたことがある。とある週刊誌では、早死にする職業ランキングの上位に若手官僚を挙げていたが、このような労働状況が要因なのかもしれない。

国家公務員は、国民の税金により給与が賄われる公僕の立場にあることから、公務を遅滞させることは当然できず、労働状況が過酷になろうとも、改善・解消に向けた取組みは二の次、三の次となってしまうことは致し方ない面があろう。また、一定の職種を除き、原則として労働基準法等の適用も除外されていることから、残業に法的な歯止めが利かないという側面もある。官庁の仕事の質・量やあり方そのものについては、さまざま評価され、政界でも公務員改革が議論されているが、国の行政を担う職員の働きやすさも、より考えられていいのではないかと個人的には思う。

最近、厚生労働省が労働基準関係法令違反の立ち入り調査を行うなど、違法行為の是正に向けた取組みを進展させている。まだまだ問題の解決には遠いと思われるが、世間の問題意識を高めるきっかけにもなったであろう。今後、労働者を酷使・使い捨てするブラック企業の減少が優先されるべきとは思うが、監督する行政側の労働状況の実態調査も(どのように誰が行うのかは分からないが)いずれ行ってみてはどうかと思う。

(※1)詳細については、厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定-『過労死』と労災保険-」(2010年11月)を参照。

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