社外取締役のあり方と企業統治

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2014年01月27日

  • 間所 健司

会社法改正案では、上場会社に社外取締役を義務付けることは見送られたが、社外取締役を置かない場合は、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、事業報告書に記載させることとなった。株主総会に社外取締役を含まない選任議案を提出する際にも、その理由を説明することが必要になる。

あわせて社外取締役の要件も厳格化される。現行規定では、当該会社かその子会社の業務執行者は、当該会社の社外取締役になれないが、親会社や兄弟会社の取締役や執行役、当該会社の取締役や執行役等の近親者についても、社外取締役になれなくなった。

わが国の社外取締役の多くは、大学教授、弁護士、公認会計士らで占められている。それぞれが経営理論、コンプライアンス、会計・内部統制等の視点から貴重な意見を述べることは重要である。しかしながら、それらは経営上の意思決定における補助的な視点に過ぎない。社外取締役は新規事業開発、海外進出、研究開発などといった経営戦略上の重要な意思決定において、本質的な議論に加われないのが実態ではないか。

あるメーカーの社外取締役をされた大学の先生からうかがった話である。あるとき取締役会の議案として多額の研究開発投資の可否を問われたことがあったそうだ。先生は結局、説明されても技術のことはさっぱりわからなかったので多い方に賛成した、と笑いながら話されたことがある。

このことは社外取締役の側に問題があるのではなく、会社側の取締役会に諮る議案の設定に問題があったのではないかと考える。

委員会設置会社へ移行するという方法もあり得るが簡単にはいかない。過半数の社外取締役をどのように選任するのか、前出の議案の問題も直ちに解決されるものではない。取締役の役割、執行役の役割を明確にし、それらの会議体である取締役会、執行役会に経営上のどのような議案を、どのような形で上程するのかを工夫しなければならない。

また、監査・監督委員会設置会社が新設された。委員会の構成員は過半数の社外取締役からなり、その権限は取締役の職務執行の監査はもとより、株主総会の議案のチェック、取締役の選任・解任への意見など幅広く、監査役・監査役会の機能強化版ともいえる。

筆者が思うに、監査・監督委員会設置会社というような、監査役・監査役会の機能、権限を強化することも企業統治の方法としてあり得るのではないか。そもそも監査役の権限は、会社法第381条第1項に規定されている通り、「取締役の職務の執行の監査」である。取締役の職務執行をしっかり監査できる体制を具体的に構築することが重要である。

とはいえ、いずれの制度でも監査役、監査・監督委員の候補を選定するのは取締役会である。その取締役候補を選任するのは株主総会であり、株主総会がしっかりと機能していなければならないことは言うまでもない。

社外取締役を設置するという大きな流れが変わることはない。社外取締役を設置するということは、社内取締役だけで固めてきた取締役会そのものが変わるのだということを自覚していかなければならない。

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