監査等委員会設置会社

2014年1月9日

昨年(2013年)11月29日、「会社法等の一部を改正する法律案」(以下、会社法改正法案という)が国会に提出された。法案提出時点で、すでに国会の会期末が迫っていたため、継続審議(閉会中審査)となったものの、今年(2014年)の通常国会で成立する可能性が高いものと思われる。これで、一昨年(2012年)9月に法制審議会が採択した「会社法制の見直しに関する要綱」(以下、要綱という)を踏まえた法改正が、ようやく実現に向かうこととなる。

ただ、会社法改正法案を要綱と比較すると、一部、変更されている事項もある。例えば、金融商品取引法上の一定の公開買付義務につき、重大な違反を犯した者の議決権を、他の株主からの請求があれば、会社法上も、原則、差し止める(停止する)という制度は、丸々、削除されている。会社法と金融商品取引法との調整(いわゆる公開会社法制)に向けた重要な一歩であっただけに、筆者としては非常に残念である。とはいえ、今回の会社法改正法案自体、重要な法改正だけに、ひとまずは素直に国会提出を歓迎したい。

もっとも、法制審議会が要綱を採択して、すでに約1年4カ月が経過している。その間に、主な改正事項を巡る議論は、ほぼ一巡したようにも感じられる。そうした中、最近、急に質問を受ける機会が増えたやっかいな事項がある。それは、要綱では「監査・監督委員会設置会社(仮称)」と呼ばれていた「監査等委員会設置会社」である。今回は、この監査等委員会設置会社をテーマとして取り上げたい。なお、監査等委員会設置会社制度の導入により、現在の委員会設置会社は「指名委員会等設置会社」と改称されることとなるが、本稿では、便宜上、委員会設置会社と呼ぶことにする。

「監査等委員会設置会社とは何か?」

この質問に回答することは意外と難しい。このような場合に重宝するのが、よく知られた既存の制度と比較して説明する方法である。ところが、監査等委員会設置会社の場合、これにも大きく二つの方法が存在する。委員会設置会社と比較する方法と、監査役会設置会社と比較する方法である。

委員会設置会社と比較すると、監査等委員会設置会社の大きな特徴は次のようになる。

(a)指名委員会、報酬委員会の設置義務がない。

(b)執行役が設置されない(業務執行取締役が存在)。

(c)「監査等委員である取締役」は、「他の取締役」とは区別して株主総会で選任される(委員会設置会社では、区別されずに「取締役」として選任)。

(d)「監査等委員である取締役」の任期は2年以内、「他の取締役」の任期は1年以内(委員会設置会社の取締役はすべて1年以内)。

大雑把にいえば、委員会設置会社から指名委員会・報酬委員会・執行役を抜いたものというのが、イメージとしては近いだろう。

監査役会設置会社と比較すると、次のようになる。

①監査役、監査役会が設置されない。その代わり、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される。

②「監査等委員である取締役」は、取締役会の一員として決議に当たって賛否の一票を投じることができる。

③監査等委員会が選定した監査等委員は、株主総会において「他の取締役」の選任議案・報酬等について意見を述べることができる。

④監査等委員会の監査権限は、適法性監査だけではなく、妥当性監査にも及ぶ。(監査役会は、適法性監査のみ。)

⑤一定の要件を満たせば、取締役会決議事項の一部を、個別の取締役に委任することができる。

⑥「監査等委員である取締役」の任期は2年以内、「他の取締役」の任期は1年以内(監査役会設置会社の取締役は2年以内、監査役は4年以内)

大雑把にいえば、監査役会設置会社の取締役会の中に監査役会を取り込み、監査役に(業務を執行しない)取締役を兼務させたものというのが、イメージとしては近いだろう。

「何となく監査等委員会設置会社のイメージはわかったような気がする。それで、一体、この新しい会社の仕組みについて、どう評価したらよいのか?」

制度の評価は、その説明以上に難しい問題だ。ただ、漠然とではあるが、筆者は次のような印象を持っている。すなわち、「監査等委員会設置会社に対する評価は、論者が、これを委員会設置会社の変種ととらえるか、監査役会設置会社の発展形と考えるかによって異なってくる」ように筆者には思われるのである。

監査等委員会設置会社を、委員会設置会社の変種ととらえる論者は、往々にして批判的である。例えば、「(a)のため、経営者人事(選任・報酬等)に社外取締役が関与する仕組みが不十分で、ガバナンスとして弱い」、「(b)のため、監督と執行の分離が不完全である」などである。

他方、監査等委員会設置会社を監査役会設置会社の発展形と考える論者は、おおむね好意的である。例えば、「①のため、複数の社外取締役が設置される」、「②③のため、経営者人事にも社外取締役が一定の関与を行うことが可能となる」、「④のため、適法性のみならず妥当性にも踏み込んだ監査ができる」、「⑤のため、実質的に監督と執行を分離することも可能となる」などである。

乱暴な言い方かもしれないが、委員会設置会社から後退した不完全な仕組みととらえるか、監査役会設置会社を前向きに発展させた仕組みと考えるかの違いであろう。

「それで、結局、監査等委員会設置会社に移行することは、良いことなのか、悪いことなのか?」

仕組みは、あくまでも仕組みに過ぎない。どんな立派な仕組みを作っても、魂を入れなければ、結局、うまく機能しない。その意味では、監査等委員会設置会社に移行すること自体よりも、なぜ移行するのか、移行して何がしたいのか、を見極めることが重要だろう。

今のところ、筆者は、このように述べて、このやっかいな質問を何とか切り抜けることにしている。

(関連レポート)
会社法改正法案の国会提出」 2013年12月5日
会社法制見直しの要綱案」 2012年8月22日

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

執筆者紹介

最新コラム