痛みの配分

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2013年04月11日

  • 木村 浩一

国家債務が膨大に膨らんだ先進各国の政治家は、難しい役回りを負っている。先達の政治家が借金の山を作ったにしても、国民に国家財政の厳しい現実を説明し、「痛みの配分」を国民に説得しなければならないからだ。また、経済の活力を復活させるために、既得権益を奪う構造改革という痛みもその中に含まれる。

ヨーロッパ周辺各国の過剰消費のつけは、ドイツ国民がサンタクロースにならない以上、各国の国民、企業が応分に負担せざるをえない。選挙においてポピュリストが当選しても、国家債務が消えてなくなるわけではなく、地道に債務の解消に努めていくしかない。

我が国も、高度成長期には、政治の役割は、都市から地方へ、製造業から第1次産業へ、利益の配分をすれば国内での利害調整が終わったが、先進国では、最悪の財政状況の下、政治の仕事として、痛みの配分を行わざるをえなくなっている。戦争による軍事費なら一過性の支出ですむが、世界最速のスピードで進む超高齢化社会に突入している我が国の場合、社会保障支出は放っておけば構造的に増加していき、そのままでは国家財政の破綻は免れがたい。

政府保証債務を含めれば1,000兆円を超える国家債務の返済は先送りされ、実質上借金のつけは、現在の若者やまだ生まれてもいない将来世代に負わされようとしている。若者は、長引く低成長経済の下、借金のつけを回され、更に就職難により雇用と所得の獲得の機会も奪われている。

経済のグローバル化により、コモディティ化した仕事は先進国から新興国に流出し、日本では考えられないほど、ヨーロッパ、アメリカの若者の失業率は異常に高い。我が国が欧米のようにならないためには、景気回復を急ぐだけでなく、コモディティ化しない報酬の高い新たな職種を多く作り出すために構造改革を急ぐ必要がある。また、若者に偏った痛みの配分を是正するため、①所得税、相続税の引上げなどの配分政策の見直し、②社会保障支出の削減、は避けて通れないだろう。構造改革と併せ痛みを伴う政策の実行は、政治の仕事である。

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